コロナ禍で増えるビルの空室問題にとどめ?「2023年問題」とは?!

コロナ禍で増えるビルの空室問題にとどめ?「2023年問題」とは?!

オフィスビルのオーナーや管理者にとって、空き部屋や空きテナントが発生するのは避けたいもの。

常に満室を目指して試行錯誤している方も多いのではないでしょうか。

 

2020年の新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、リモートワークが拡がりました。

 

オフィスを持たずともビジネスを稼働させると分かったことは、企業にとっても従業員にとっても、大きなメリットになりました。

 

一方で、都心では「オフィスビルの2023年問題」が叫ばれています。

 

リモートワークがここまで浸透し、すっかり新しい時代を迎えつつある中で、2023年になると新築オフィスビルが大量に竣工されてしまうのです。

 

コロナ禍の前は、ビルオーナーが優位だったオフィスビルに、変化の波が訪れています。

 

本記事では、コロナ禍で増加する都心の空きビルの問題、2023年問題を取り上げ、解説していきます。

 

オフィスビルの2023年問題-発端となったテレワークの浸透

2020年以降、世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルス。

それまでオフィスで働くことが当たり前だった世界が一変しました。

 

日本でも馴染みのなかったテレワーク、リモートワークが、よくニュースやウェブの記事で取り上げられるように「急速に浸透しました」というのは本当なのでしょうか。

 

総務省の「令和2年通信利用動向調査」では、産業別のテレワーク導入率も発表されていますが、業種によってはテレワークを導入しにくいことが見てとれます。

 

情報通信業が92.7%と非常に高い割合である一方、運輸・郵便業では30.4%、サービス業・その他が34.7%となっています。

 

しかしながら、これらの業種を除けば意外と浸透していることも分かります。東京都庁は、2020年4月以降のテレワーク実施率の推移を発表しています。

 

2020年から約2年経過した2022年6月までの変動を見てみると、テレワーク実施率がピークに達したのが2021年9月で65%。その後はワクチン接種が進み、一部では完全出社になった企業もあるようです。

 

<参照>

東京都庁 「テレワーク実施率調査結果」

 

テレワークが難しい業種を除けば、私たちの予想に反して、以前のように完全な出社を命じる企業が少ないことが、このグラフで分かります。

 

出社とリモートワークを組み合わせた働き方を取り入れる企業も案外多いのは、まだまだ感染者数が一定数ある中で感染を避けるべきという考えの他、リモートワークで得たメリットが大きいからでしょう。

 

出勤時間を減らすことができたり、子育てのママだったら育児と両立できたりと、「働きやすさ」を一度体験してしまった働き手のニーズが、このグラフに反映されているというのもありそうです。

 

<情報参照元>

AIG損保 「中小企業のリモートワーク普及率は?導入状況と今後の展開について」

東京都庁 「テレワーク実施率調査結果」

 

止まらない空室率の上昇と賃料の下落

テレワークの浸透で、出社して働く人々が減少し、都心をはじめ主要都市で、空きビルが増加しました。

 

三幸エステート株式会社の調べでは、東京主要5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)のオフィスビルの空室率を見てみると、コロナが発生する以前の2020年1月に空室率が1.13%だったのが、2022年8月現在では5.04%にまで上昇していることが分かります。

(参考までに、90年のバブル期の空室率0.39%)

 

<参照>

三幸エステート株式会社「2022年8月 オフィスマーケット調査月報 東京23区」

 

三鬼商事の発表したデータでは、都心5区の空室率の上昇にともない、大幅に下落していることが分かります。

 

出社を前提としない勤務スタイルは、地方よりも浸透しており、解約が多くなっています。

したがって、特に都心ではオフィスの使い方を見直す企業が増えているのです。

 

空室率が4%に達した2013年と比較してみると、2013年はまだテナントの需要が旺盛でした。

今回は、需要が弱く、フリーレントの物件も見られるほど、借り手優位の傾向にあるのが特徴です。

 

<参照>

東京新聞 「都内のオフィス空室率6.39% 高止まりを招く「2023年問題」って?<深掘りこの数字>」

このように空室率が上昇する中、下記の一例のように、2023年は複数の大規模開発プロジェクトの竣工が予定されており、オフィスの大量供給が見込まれます。

 

・東宝日比谷プロムナードビル

・虎ノ門・麻布台地区第一種市街地再開発事業 A街区

・虎ノ門ヒルズ ステーションタワー

・日本橋一丁目中地区再開発

・八重洲二丁目中築第一種市街地再開発

 

以前であれば、このような立地の良い大型のビルは、竣工前に満室になることがほとんどでしたが、現状ではあまり目途が立っていないといいます。

 

オフィスビル総合研究所が2021年5月に発表した予測によると、空室率は2023年1月~3月でピークに達するとされており、都心の空室問題が声高に叫ばれている状況です。

 

<情報参照元>

TOKYO BEST OFFICE 「2023年竣工予定の東京の新築オフィスビル特集」

建美家 「ニーズは戻るか。プロが語るオフィス2023年以降問題」

不動産経済オンライン 「都心オフィス空室率4%台半ばに 解約増で大阪・名古屋も借り手優位続く 三幸エステート」

株式会社stak 「2023年問題を抱えるオフィスビルの今」

三幸エステート株式会社「2022年8月 オフィスマーケット調査月報 東京23区」

 

空室率を助長するサードプレイスオフィスの台頭と市場規模

浸透したテレワークですが、一方で問題も。自宅では仕事環境が整わず、自宅でのテレワークが困難であるなどの理由から、自宅から近い場所に、「レンタルオフィス」、「シェアオフィス」、「コワーキングスペース」といった「サードプレイスオフィス」を持つ人が増えています。

 

需要が高まると睨み異業種からいち早く参入したのが、JR九州、サイバーエージェント、青山商事などの大手日本企業でした。現在では下記のように多くの企業が挙げられます。

 

<参照>

PR TIMES 「国内外のワークプレイス関連サービスをマッピング『世界のコワーキングサービス カオスマップ 2022年5月版』を公開」

本社や支社としてテナント契約する場合、莫大な初期費用と月額の賃料が必要です。

 

利益を圧縮してしまうため、それを避けるために初期費用・月額費用ともに低額に抑えられるのが魅力です。

 

契約期間の短いレンタルオフィスは、業績の動向や組織変更に合わせて柔軟な変更もできます。

したがって、定期賃貸契約からレンタルオフィスに切り替える企業のニーズが高まっているのです。

 

より柔軟なオフィス利用のニーズ、リモートワークの場としての利用ニーズはますます拡大するでしょう。

 

株式会社日本能率協会総合研究所の調査によると、サードプレイスの別の呼称である「フレキシブルオフィス」の2026年度市場規模は、2,300億円になるとの見込みがあります。

 

<参照>

ザイマックス総研の研究調査 「フレキシブルオフィス市場調査2022」

https://soken.xymax.co.jp/2022/02/25/2202-flexible_office_survey_2022/

2020年より東京23区のフレキシブルオフィス市場の成長傾向を毎年把握してきたザイマックス不動産総合研究所のレポートによると、

 

・ 東京23区内のフレキシブルオフィスは1,080拠点

・ 総面積は約21.4万坪。オフィスビルがどれほど存在するのかを示す指数オフィスストック(1,298万坪)の約1.6%

・ フレキシブルオフィスを展開する事業者数は108社

 

ということが分かりました。

 

これまでもこういったオフィスの拠点数はコロナ前から増加傾向にありましたが、コロナ以降は既存事業者の拠点拡大に加え、経営状況が厳しくなっているホテルや商業施設などの他業態からの参入がみられ、拠点数の増加が加速させています。

 

<情報参照元>

ザイマックス総研

「フレキシブルオフィス市場調査2022」

PR TIMES

「フレキシブルオフィス市場2026年に2,300億円規模に」

マイナビCANVAS

「【シェアオフィスとは?】利用するメリット、選ぶ際のポイントを解説」 

イメージ

サードプレイスが求められるもう一つの理由―企業のBCP対策

多くの企業が被災した2011年の東日本大震災以降、地震や水害など非常事態に向けた対策の重要性が高まりつつあり、その中で企業は「BCP対策」の必要性を感じ始めています。

 

BCP(Business Continuity Plan)とは、企業における緊急事態発生時の事業継続計画のことを指し、BCPに取り組むことを「BCP対策」といいます。

 

災害大国ともいわれる日本では、地震や台風などの水害は避けることができません。

それらに遭遇した際に、その被害を最小限にとどめつつ、普及を早急に行うことが求められます。

 

業務効率化やコミュニケーションの円滑化等の目的から、都心のオフィスビルに集約する企業は多い一方で、BCP対策として拠点の分散を図り話題となったのは、人材サービス業大手のパソナグループでしょう。

 

東京都千代田区に本社があるパソナは、人事や広報などの社員1800人のうち1200人が淡路島に常駐させ、2024年5月末に本社機能移転を完了させる方針です。

 

特に、大きな地震が起こった場合、甚大な被害が想定される東京にオフィスを一か所に集中させることは、事業のリスクがともないます。このことを回避するために、意思決定や業務の機能を分散させる必要があり、その分散先としてサードプレイスオフィスが注目されています。

 

クラウドによるデータ共有、Web会議システムによる遠隔でのコミュニケーションなどが可能になった昨今において、同じ場所で働かなければならない必要性は低下しつつあります。

 

<情報参照元>

株式会社ワイドテック

「事例で解説!BCP対策(事業継続対策)とは?」

帝国データバンク

「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2021年)」

パソナグループ

「本社機能を分散、淡路島に移転開始」

BBTオンライン

「パソナが本社を淡路島に移転する隠れた狙いとは」

 

空きビルのおすすめ活用方法7選

台頭してきたサードプレイスオフィスは、ビルオーナーやビル賃貸業者にとっては、企業による「解約」につながりかねない脅威となる存在。

 

一方で、

「アフターコロナになれば出勤することになるかもしれない」

「出社している人もいるからオフィスは必要」

などの状況があり、オフィスを解約するまでに至っていない企業もあります。

 

そのような企業は、オフィスを使用していない期間や、使用していないスペースにおいて、以下のような活用方法が検討できます。

 

・レンタルオフィス

・貸し会議室

・トランクルーム

・物置シェアサービス

・ポップアップストア

・託児所・保育室

・有料自習室

 

次の記事では、上記を具体的に紹介し、また、オフィスの空きスペースを使用してマーケティングに活用している企業を紹介します。

 

<情報参照元>

アイネット

「空き家や空きビル・空室の活用方法は?ビジネスへの活用事例」

KASEグループ

「空き部屋や空きビルの活用方法とは?ビジネスへの活用事例をご紹介」

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