「ビル管理資格って具体的にどんなもの?」「資格を取ると年収はどう変わるの?」「実務経験がなくても資格は取れるの?」
そう思う方もいるのではないでしょうか。
ビル管理資格は、専門知識を証明しキャリアアップに繋がる可能性を秘めています。
どのような実務経験が必要なのかについても詳しく解説します。
今回は、ビル管理資格の基本情報から、取得の難易度、資格を持つことで期待できる年収の変化、そして実務経験がない状況での資格取得の可能性についてわかりやすく解説していきます。
ビル管理士とは?
ビル管理士、その他の名称で建築物環境衛生管理技術者とも呼ばれるこの資格は、ビルや施設の衛生管理を法的に監督する国家資格者を指します。
ビル管理士は、法律に基づき、特定の大規模な建築物において、衛生的な環境を維持するための管理を行う責任を負います。
これには、学校や大型商業施設など、一定の広さを超える建物が含まれます。
建築物の種類 | 詳細 |
---|---|
興行場 | 映画館、劇場、音楽会用のホールなど |
百貨店等 | 大型のショッピング施設など |
集会場 | コンサートホール、会議場など |
図書館、博物館、美術館 | 教育・文化施設 |
遊技場 | ボーリング場、ダンスホールなど |
店舗 | 小売店舗、大型スーパーマーケットなど |
事務所 | オフィスビル、企業の本社など |
学校 | 小学校、中学校、高校、大学など |
旅館 | 宿泊施設 |
※特定建築物
ビル管理士資格のキャリアメリット
資格取得がもたらすキャリアアップ効果
ビル管理士としての資格を持つことは、専門的な知識と実務経験を要するため、その難易度は高いとされています。
この資格を取得することで、給与の増加や転職市場での競争力が向上すると見込まれます。
ビル管理士は、単にビルのメンテナンスだけでなく、空気環境の測定や貯水槽の清掃など、他の専門分野への道も開く資格です。
建築物が存在する限り、この資格の需要は続くと言えるでしょう。
ビル管理士になるためのステップ
ビル管理士になるには、試験合格または特定の講習を受けることが必要です。
これらのプロセスを経ることで、ビル管理の専門家としての地位を確立し、さらにはキャリアの幅を広げることが可能になります。
給与アップと転職市場での優位性
ビル管理士の資格は、転職活動において強力なアピールポイントとなります。
一般的にビルメンテナンス業界は給与が低いと見られがちですが、資格を持つことでその印象を覆し、より高い年収を目指すことができます。
資格取得後は、資格手当や専任手当が付く場合もあり、経済的なメリットが期待できます。
資格取得の努力が評価につながる
ビル管理士の資格取得には相応の努力が必要です。
勉強と準備を要するこの過程は、ビルメンテナンス業務への熱意を会社に示す機会となります。
資格を取得することで、業務への真剣な取り組みが評価され、職場内での立場が向上する可能性があります。
追加資格取得の道が開かれる
ビル管理士の資格を取得することで、さらに多くの関連資格の講習を受ける資格が得られます。
これにより、キャリアの選択肢が広がり、他の職種への挑戦も可能になります。
キャリアアップを目指す方にとって、これは大きな魅力となるでしょう。
ビル管理士:建築物環境衛生管理技術者の試験を受ける
建築物環境衛生管理技術者の受験資格
ビル管理士の資格を取得するための試験は、特定の条件を満たした者のみが受験できます。
日本建築衛生管理教育センターによると、特定の建築物で2年以上の環境衛生管理の実務経験が必要です。
具体的には、興行場や百貨店、オフィスビルなど、多くの人が利用する施設での勤務経験が求められます。
ただし、倉庫や工場など特定の施設での経験は対象外となるため、受験資格を得るための実務経験は慎重に選ぶ必要があります。
建築物環境衛生管理技術者の試験日程
この資格の試験は年に1回実施され、今年は2023年10月1日でした。
試験の申し込みは事前に行う必要があり、試験日程に合わせて準備を進めることが重要です。
建築物環境衛生管理技術者の試験科目
ビル管理士試験は、建築物の衛生管理に関する幅広い知識を問われるもので、合格率は平均して10%〜20%と非常に厳しいものです。
試験科目は建築物衛生行政概論や建築物の構造概論など、専門的な7つの科目があります。
これらの科目を網羅するためには、独学だけでなく専門の講座を受けることが推奨されます。
ビル管理士:建築物環境衛生管理技術者の講習を受ける
建築物環境衛生管理技術者講習会の受講プロセス
ビル管理士の資格を得るためには、専門講習会への参加も一つのルートです。
この講習会は、特定の条件を満たす人が対象で、合計101時間の専門教育を受ける必要があります。
試験に比べて直接的な学習機会を得られるメリットがありますが、受講資格がより厳格であり、講習費用も108,800円と高額です。
また、仕事を持つ人にとっては、長時間の講習が障壁になる可能性があります。
講習会への参加資格
講習会への参加資格は主に二つのカテゴリーに分けられます。
一つは学歴とそれに続く実務経験、もう一つは特定の免許とその後の実務経験です。
例として、自然科学系の大学卒業後に1年以上の建築物維持管理実務を経験した者や、第三種電気主任技術者免許を取得後に同様の実務を1年以上経験した者が挙げられます。
詳細な資格要件は、日本建築衛生管理教育センターの公式サイトで確認できます。
区分 | 学歴又は免許等 | 経験年数 | 実務経験の内容 |
---|---|---|---|
1 | 大学の理学、医学、歯学、薬学、保健学、衛生学、工学、農学、獣医学の課程卒業、防衛大学校理工学課程卒業海上保安大学校卒業 | 1年以上 | 建築物の維持管理に関する実務特定建築物の用途部分での環境衛生上の維持管理実務環境衛生監視員として勤務 |
2 | 短期大学・高等専門学校の理学、医学、歯学、薬学、保健学、衛生学、工学、農学、獣医学の課程卒業 | 3年以上 | 同上 |
3 | 高等学校・中等教育学校の工業に関する学科卒業 | 5年以上 | 同上 |
4 | 上記1~3以外の課程又は学科卒業、大学・短期大学・高等学校の文科系等卒業 | 5年以上 | 同上の実務経験、及び実務指導監督経験、環境衛生監視員として勤務 |
5 | 医師(歯科・獣医師、薬剤師を除く)一級建築士、技術士(機械、電気電子、上下水道、衛生工学部門) | 不要 | 実務経験不要 |
6 | 第一種冷凍機械責任者免状、第二種冷凍機械責任者免状 |
第一種:1年以上 第二種:2年以上 |
建築物の維持管理に関する実務、特定建築物の用途部分での環境衛生上の維持管理実務、環境衛生監視員として勤務 |
7 | 臨床検査技師免許 | 2年以上 | 同上 |
8 | 第一種電気主任技術者免状、第二種電気主任技術者免状、第三種電気主任技術者免状 |
第一種:1年以上 第二種:2年以上 |
同上 |
9 | 特級ボイラ技士免状、一級ボイラ技士免状 |
特級:1年以上 一級:4年以上 |
同上 |
10 | 衛生管理者免許 | 5年以上 | 同上(常時1,000人を超える労働者を使用する事業場での専任) |
11 | 個別認定(厚生労働大臣が同等以上の学歴及び実務経験、または知識及び技能を有すると認める者) | 個別審 |
参考情報元:建築物環境衛生管理技術者講習会
講習会のカリキュラム内容
講習会では、以下の7つの科目を網羅する101時間のプログラムが組まれています。
科目名 | 受講時間 |
---|---|
建築物衛生行政概論 | 10時間 |
建築物の構造概論 | 8時間 |
建築物の環境衛生 | 13時間 |
空気環境の調整 | 26時間 |
給水及び排水の管理 | 20時間 |
清掃 | 16時間 |
ねずみ、昆虫等の防除 | 8時間 |
定員は100名に限られており、希望者は早めの申し込みが推奨されます。
講習会修了後の資格取得
厚生労働大臣が認定する日本建築衛生管理教育センターの講習を修了すると、修了証書が交付されます。
この証書をもって免状申請を行うことで、資格が授与されます。
ただし、講習会場が限定されており、受講資格を有することが前提です。
文系出身者を含むさまざまな学歴背景の人々が、ビル管理に関連する実務経験を積むことが必要です。
また、定員に限りがあるため、計画的に申し込むことが求められます。
ビル管理士試験の概要
ビル管理士試験に挑む方へ向けて、試験の全貌を明らかにします。これから受験を検討している方は、この情報を基に準備を進めてください。
試験内容と科目の詳細
ビル管理士の試験では、次の7つの科目が出題されます。
- 建築物衛生行政の基礎
- 建築の基本構造
- 建築環境の衛生管理
- 空調システムの管理
- 水回りの衛生管理
- 清掃業務の知識
- 害虫・害獣対策
これらの科目から総計180問が出題され、試験は午前と午後のセッションに分けられます。実務経験がある方には馴染みのある内容が多く含まれていますが、試験範囲の広さと、各科目での最低正答率の要求には注意が必要です。
合格のハードルとは?
ビル管理士試験の合格には、以下の2つの条件が設けられています。
- 総出題数の65%以上に正解すること。
- 各科目で出題数の40%以上に正解すること。
他の国家試験と比較しても、65%という合格基準はやや高めです。また、特定の科目で40%未満の正答率では、他の科目で高得点を取っていても不合格となるため、全科目を均等に学習することが重要です。
試験実施の概要
ビル管理士の試験は年に1度、通常は10月の第一日曜日に行われます。全国各地で実施されるこの試験は、科目合格制度がないため、不合格の場合は翌年に全科目を再受験する必要があります。
資格取得の別ルート
試験以外にも、建築物環境衛生管理技術者講習を修了することでビル管理士資格を取得する道があります。この講習は、試験と同じく7科目を101時間かけて学び、修了試験に合格することで資格が授与されます。ただし、講習期間が長く、平日の受講が必要なため、仕事を持つ方には挑戦しにくいかもしれません。
試験の合格基準とは?
ビル管理士試験の合格基準について詳しく見ていきましょう。
各科目の合格点と全体の合格点
以下の表は、各科目の合格点と全体の合格点を示しています。
科目名 | 出題数 | 合格点(最低限の正答数) |
---|---|---|
建築物衛生行政の基礎 | 20 | 8点以上 |
建築環境の衛生管理 | 25 | 10点以上 |
空調システムの管理 | 45 | 18点以上 |
建築の基本構造 | 35 | 14点以上 |
水回りの衛生管理 | 15 | 6点以上 |
清掃業務の知識 | 25 | 10点以上 |
害虫・害獣対策 | 15 | 6点以上 |
合計 | 180 | 117点以上 |
全科目で40%以上の正答率が求められ、全体では65%以上の正答率が必要です。
一つの科目でも40%未満の場合は、他の科目で高得点を取っていても不合格となります。
過去の合格率とその傾向
合格率は年によって変動があり、一般的には10~20%の範囲で推移しています。
合格率が高い年の次の年は難易度が調整される傾向にあるため、試験の傾向を把握しておくことが重要です。
独学での合格も可能ですが、効率的な学習のために通信講座などの利用を検討することをお勧めします。
ビル管理士:過去問紹介
出典:日本建築衛生センター
日本建築衛生センターのホームページでは過去問と回答、合格基準が公開されています。
これから資格取得を考えられている方は是非挑戦してみてください!
ビル管理士のまとめ
今回は、ビル管理士について細かく紹介いたしました。
過去に紹介した、ビルメン4点セット
ビル管理士(建築物環境衛生管理主任技術者)は、第3種電気主任技術者とエネルギー管理士と合わせて、ビルメン3種の神器と呼ばれている資格です。
ビルメン業界で働かれている方にとっては重要な資格となりますので、学歴や経歴で受験出来るのであればぜひ挑戦してみてください!