防火設備定期検査とは?対象設備・検査方法・費用相場など徹底解説

防火設備定期検査とは?対象設備・検査方法・費用相場など徹底解説

防火設備定期検査は多くの施設が定期的に行う必要があります。

しかし、対象となる設備、検査内容、検査方法、検査の頻度などをよく分からない方は少なくありません。

 

本記事では、施設の所有者・管理者・テナント企業・一般の入居者などが知っておくべき防火設備定期検査について、深掘りしていきます。

ぜひご覧ください

 

防火設備定期検査とは

防火設備定期検査とは、建築基準法を根拠として2016年に制度化された検査項目です。

 

防火設備を有する公共性の高い建築物(特定建築物)を所有している個人または企業を対象としており、建築物内の防火設備を検査します。

法律で定められている「法定検査」であるため、検査を実施することは義務であり、仮に怠った場合は罰金が発生します。

 

防火設備定期検査の対象となる建築物は、建築物の所在地を管轄している特定行政庁によって、指定の条件に若干異なる場合があります。

 

所有している建築物が対象かどうかを知りたい方や、自分の地域の詳細な条件を知りたい方は、特定行政庁に問い合わせるか、防火設備定期検査の専門家に相談するようにしましょう。

 

検査の頻度は原則1年に1回です。

 

検査が設置された経緯

法定検査として防火設備定期検査が新設されたのは、2013年(平成25年)10月に福岡市の診療所で起きた火災事故がきっかけです。

 

それまでは防火設備の設置基準は建築基準法で定められていたものの、検査に関する専門的な基準は設置されていませんでした。

そのため、火災時に防火設備(防火扉)が全て正常に作動せず、火災の被害が拡大。結果的に、10人もの死者が出た悲惨な事故となってしまいました。

 

これを受け、政府は防火設備の維持管理の重要性を再認識し、二度と防火設備の不良を原因として死者を出す事故を起こさないために建築基準法を改正。

防火設備に特化した検査項目である「防火設備定期検査」が新設されることになります。

 

検査対象となる防火設備

防火設備定期検査の対象となるのは、以下の4つです。

・防火・防煙シャッター

・防火扉

・耐火クロススクリーン

・ドレンチャー

 

また防火設備は「随時閉鎖式」と「常時閉鎖式」に分類されますが、防火設備定期検査の対象となるのは「随時閉鎖式」です。

 

随時閉鎖式と常時閉鎖式の違い

随時閉鎖式の火災設備とは、普段は解放されているが温度感知器の作動でロックが解除し自動閉鎖するものや、温度ヒューズの溶解でストッパーが外れ自動閉鎖するものを指します。

 

一方で、常時閉鎖式の火災設備とは、通過時に開閉する以外は常に閉まっている状態のものを指します。

 

防火設備定期検査の対象は、随時閉鎖式の防火設備です。

普段は解放状態にあるため、有事の際に問題なく稼働するか確認をする必要があります。

 

対して、常時閉鎖式の防火設備は、常に防火可能な状態にあるため、防火設備定期検査の対象外です。

代わりに、従来通りの建築物の定期調査時の点検が適用されます。

 

防火・防煙シャッター

防火・防煙シャッターとは、建物内で火災が発生した際に、炎や煙の拡大させないために設置するシャッターです。

主な検査項目は以下となっています。

 

【シャッター周辺の環境】

有事の際にシャッターの下に物があると完全閉鎖を抑制してしまうため、邪魔な物が設置されていないかを確認します。

 

【駆動装置】

シャッターを開閉するローラーチェーンやワイヤーロープなどの部品が、損傷・変形していないかを確認します。異常があれば取り替えが必要です。

 

【危険防止装置】

いわゆる「挟まれ防止」の機能が正常に動くかを確認します。正常稼働の場合、人や物などの障害物があれば自動停止し、障害物がなくなれば再度降下を始めます。

 

【連動機能】

熱や煙の感知、または非常ボタンに連動して自動降下を始めるかを確認します。連動機能が正常でない場合はそもそも稼働しないため、特に重要な検査項目といえるでしょう。

 

防火扉

防火扉とは、建物内で火災が発生した際に、炎や煙の拡大させないために開閉させる扉のことです。

主な検査項目は以下となっています。

 

【扉周辺の環境】

扉の開閉部に物があれば正常に扉を閉めることができないため、邪魔なものがないかを確認します。

 

【危険防止装置】

防火戸の重量、閉鎖スピードから算出される運動エネルギー、万が一挟まれた時の押付ける力が一定基準以下になるかどうか、を確認します。

 

【扉の取付状態】

扉、扉の枠、扉の金具などの部品をチェックし、取付が問題ないかを確認します。

 

耐火クロススクリーン

耐火クロススクリーンは耐火クロスを使用したスクリーンが、天井から降下してくることで防火機能を発揮する防火設備です。

スクリーン部分はガラスクロス製でできており、炎と煙を遮断することが可能です。

こちらはあまり聞きなれない方も多いのではないでしょうか。

 

主な検査項目は以下となっています。

 

【連動機能】

熱や煙の感知、非常ボタンに連動して降下を始めるかを確認します。

 

【危険防止装置】

耐火クロススクリーンには巻取り式とバランス式があり、巻取り式耐火クロススクリーンには危害防止装置がついています。

接触時に自動停止し、障害物がなくなれば再降下するか確認します。

 

【スクリーン部分の損傷など】

防火機能を有するスクリーン部分やスクリーンを開閉するローラーチェーンなどの部品に損傷・変形・穴などがないかを確認します。

ドレンチャー

ドレンチャーとは、天井の散水ヘッドから水を噴射させ、水幕を形成することで防火機能を発揮する防火設備です。

駅や空港、大規模な商業施設など、防火扉や防火シャッターでは閉鎖できない空間を有する施設に設置されることが一般的です。

 

水を出して検査することができないため、有事の際と同様の状態で検査をすることができません。主な検査項目は以下となっています。

【周辺の環境】

ドレンチャー周辺に障害物がある場合は、水を広く噴射させることができません。

確認時だけでなく、常日頃から障害物を置かないように啓蒙する必要もあります。

 

【散水ヘッド】

散水ヘッドの設置位置や、散水ヘッドに詰まりがないかなど、噴射に問題がないかを確認します。

 

【水源】

ドレンチャー自体の確認ではなく、水源である貯水槽などが損傷・変形していないかの確認です。

問題なく水が噴射するかどうかにおいて、重要な検査項目です。

 

イメージ

防火設備定期検査の方法

防火設備定期検査は、

①検査通知書が届く

②検査会社を探す

③必要書類の準備

④検査の実施

⑤報告書の提出

という大まかな流れで進めていきます。

 

ここで重要となるのが検査会社の選び方です。

実績・費用相場と照らし合わせながら、最も優良な会社を選ぶようにしましょう。

 

必要書類

検査時に必要な書類は、初回と2回目以降で異なります。

具体的には以下を揃えるようにしましょう。

 

▼初回検査に必要な書類

(1)確認済証

(2)検査済証

(3)建築平面図

(4)設備図面(消防設備等)

(5)面積記載図

(6)消防設備点検報告書

 

▼2回目以降に必要な書類

(1)前回報告書

(2)平面図

(3)消防設備点検報告書

 

検査費用の内訳

検査費用の内訳は以下のようになっています。

・基本料金

・防火設備ごとの検査料金

・報告書作成代行費用

・申請手数料

・その他(消費税、業者の交通費など)

 

設備の数や施設の規模によって費用は異なります。

安い場合で三万円程度、高い場合では数十万円する場合も。

具体的な費用を確認したい場合は、まずは業者に問い合わせしましょう。

 

検査が可能な有資格者

防火設備定期検査を実施できる資格は、「一級建築士」「二級建築士」「防火設備検査員」です。

建築士の資格は有しているだけでは検査できず、都道府県の建築士事務所登録が求められます。

 

その他、ドレンチャーなど特殊な設備の点検には専門知識が必要となるので、メーカーやメンテナンス企業の協力を要請する場合もあります。

 

施設の関係者は防火設備定期検査の有無を確認しよう

施設の所有者だけでなく、その施設の入居する企業や個人にも深く関係のある防火設備定期検査。

所有者はこの検査の概要を認識し、過去の悲惨な火災事故を繰り返すことのないようにしなければなりません。

 

また入居者もその施設がきちんと検査を行っているのかという目線を持ち、気になる箇所などがあれば入居を決断する前に質疑応答で解消するようにしましょう。

 

▼参考URL

https://tatuki.co.jp/thelp/type/bouka.html

https://www.bureauveritas.jp/magazine/220411/005

https://bilumen-taishi.jp/fire-prevention-equipment-periodical-inspection

chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/http://www.toyo-shutter.co.jp/library/pc/index/img/teikitenken_houkokuseido.pdf

https://www.teikihoukoku.net/boukasetsubi-kensa/

https://www.tokyo-machidukuri.or.jp/tatemono/boukasetsubi/gaiyou.html

https://bilumen-taishi.jp/fire-prevention-equipment-periodical-inspection

https://www.cmhiro.com/contents/1263/

https://bilumen-taishi.jp/fire-protection-equipment-cost

https://www.teikihoukoku.net/boukasetsubi-kensa/

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