天然ガス問題:日本の埋蔵量が凄い!?メタンハイドレートはいつ実用できる?

天然ガス問題:日本の埋蔵量が凄い!?メタンハイドレートはいつ実用できる?

「燃える氷」メタンハイドレート

 

石油や石炭などの化石燃料に代わり、実用化の期待が高まっているエネルギー資源の一つが「メタンハイドレート」です。メタンハイドレートは「メタン」という物質と水分子が結びついてできた天然ガスの一種で、火を近づけると燃えることから「燃える氷」とも呼ばれています。

 

メタンハイドレートは世界各地の海底に分布していますが、資源がないとされてきた日本の周辺海域でも確認されています。

 

具体的には、南海トラフと呼ばれる愛知県の遠州灘から宮崎県の日向灘にかけての一帯や、新潟県沖などの日本海側です。

 

埋蔵量も豊富で、南海トラフの東側(渥美半島〜志摩半島沖)だけでも国内の天然ガス使用量の11年分に相当する量が眠っていると考えられています。

 

2種類あるメタンハイドレート

 

メタンハイドレートは、深海底下の浅い地層内や永久凍土地帯の少し深い地層内存在しています。その埋蔵パターンは2種類に分けることができます。

 

①砂層型メタンハイドレート

海底面からさらに数100メートル深くの地層に、砂と混じり合った状態で存在するタイプのメタンハイドレートです。南海トラフ海域の東側を中心に分布していて、重点的に実用化に向けた技術開発が進められています。

 

「砂層型メタンハイドレート」は、石油や天然ガスと存在形態が類似しており、既存の石油・天然ガス開発の技術や既存の機器を用いて開発できる可能性があります。

 

②表層型メタンハイドレート

水深500メートル以深の海底面や、比較的浅い深度の泥の地層の中に塊状で存在するタイプのメタンハイドレートです。「砂層型」とは異なり砂と混じり合っていないため、比較的採掘が容易だと考えられています。

 

表層型においては、メタンガスが自然に湧き出す「メタンプルーム」という現象も確認されており、メタンプルームからメタンガスを捕集して資源として活用できれば、これまで空気中に放出されていたメタンガスが現象するため、地球温暖化の防止も期待できます。

 

メタンハイドレートを活用するメリット・デメリット

 

メリット

メタンハイドレートを活用する最大のメリットは、温室効果ガスの削減に役立つということです。メタンハイドレートを燃やした場合に排出される二酸化炭素は、石油や石炭を燃やすよりも約30%ほど少ないことも特徴のひとつです。

 

また、メタンハイドレートの実用化が進めば「自前資源」の確保にも繋がり、エネルギー自給率を大きく向上させることができます。

 

デメリット

多くの可能性を秘めるメタンハイドレートですが、その採掘方法は確立されていません。様々な採掘方法を試したり実際に採掘を始めたりする中でメタンガスが漏洩してしまうと、海底生物の生態系を脅かす可能性があります。また、漏洩したメタンガスが空気中に拡散してしまうと、地球温暖化を加速させてしまうおそれもあります。

 

この他にも、メタンハイドレート採掘の副産物として生まれる生産水を海に流したときに、周囲の生物へ影響を及ぼすことも考えられます。

 

生態系や地球環境への影響を最小限にとどめる形での技術開発が望まれます。

 

実用化までの工程

 

メタンハイドレートを実用化するためには、重ねて述べてきたように採掘技術の開発が欠かせません。また、せっかく実用化しても既存のエネルギーよりも値段が高ければ意味がありません。採掘コストが採算ラインを下回ることも必要です。

 

2018年からはメタンハイドレートの試掘や環境アセスメントが進められており、並行して技術革新のための取り組みも行われています。今後、海洋産出試験が実施され、2027年ごろまでに民間企業による商業化プロジェクトの開始が目標とされています。

 

まとめ

現在の日本はエネルギー資源を輸入に頼っており、国際情勢の変化が電気料金などの変化に直結します。日本の海に埋蔵するメタンハイドレートが実用化されれば、国内のエネルギー価格の安定に繋がるでしょう。加えて、産油国に対して「安く石油売ってくれないなら自前のメタンハイドレート使うよ」などと交渉して、石油価格を引き下げることができるかもしれません。

 

一方で、実用化のためのハードルは数多く残っています。技術開発に加え、メタンハイドレートのライバルとなる石油や既存の天然ガスと同等かそれよりも安く採掘できるようにならなければなりません。

 

とはいえ、私達の生活を豊かにするためにも、メタンハイドレートをはじめとするエネルギー問題に関心を持ち続けることが大切だと言えるでしょう。

 

参考資料

メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム「日本周辺海域におけるメタンハイドレート起源BSR分布図」(https://www.mh21japan.gr.jp/pdf/BSR_2009.pdf)[参照2023-2-25]

産総研マガジン「海底下に眠る「燃える氷」がエネルギー問題の救世主に!?」
https://www.aist.go.jp/aist_j/magazine/s0005.html)[参照2023-2-25]

MH21-S研究開発コンソーシアム「生態系への環境影響について」
https://www.mh21japan.gr.jp/environ.html)[参照2023-3-25]

経済産業省「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」
https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/12213398/www.enecho.meti.go.jp/category/resources_and_fuel/strategy/pdf/report1902.pdf)[参照2023-3-25]

東京海洋大学(https://www.kaiyodai.ac.jp/overview/jointuse/sentanken/post_276.html

[参照2023-3-25]

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