今回はさまざまな現場でご依頼いただく、エフロ除去についてご説明いたします。
エフロとは、正確には「エフロレッセンス」と呼ばれるもので、外観は白い花が咲いている様にも見え、日本語では『白華』や『白華現象』などとも呼ばれています。
発生のメカニズムとしては、目地等のコンクリート素材の可溶成分を含んだ溶液(水酸化カルシウム[Ca (OH)2])が内部から表面に移動し、乾燥に伴って水分が蒸発することで、コンクリート表面に溶け出します。
その後、炭酸化反応によって水酸化カルシウムが空気中の二酸化炭素(CO2)と反応して炭酸カルシウム(CaCO3)に変化します。したがって、エフロレッセンスの主成分は炭酸カルシウムと言われています。
エフロが出やすいのは屋外だと階段部分、屋内だとお風呂場等の水分がたまりやすい箇所になります。太陽光が当たる部分は深く浸透する前に水分が蒸発しやすいのですが、日陰だとそうもいきません。
階段でも立ち上がり面で発生しているケースをよく見掛ると思いますが、やはり日光が当たりにくい事が関係していると判断できます。
エフロの除去方法
エフロは目地に沿って発生している細い筋状のものから、大きなものでは堆積して氷柱のように大きくなったものまで様々です。
堆積して肥大化したエフロに関しては、洗剤で除去する前に物理的にこそぎ落とした後、エフロ除去剤で除去する方法が効果的です。
炭酸カルシウムが主成分であるエフロを分解・除去するためには酸が有効であることは言うまでもないですが、数ある酸の中でもエフロを分解するのに最も適した酸は、ズバリ塩酸です。
化学式にするとよりわかりやすくなります。
CaCO3(炭酸カルシウム)+2HCl(塩酸)→CaCl2(塩化カルシウム)+H2O+CO2
つまり、炭酸カルシウムに塩酸を加えると、塩化カルシウムと水と二酸化炭素に綺麗に反応します。これほど綺麗な科学的な汚れの分解反応は、かなり珍しいことです。
では、塩酸を薬局で購入し、エフロに塗布するのが効果的なのかというと、残念ながら以下のような問題があります。
①塩酸成分が10%以上の溶液を購入する場合、医薬外劇物となるため印鑑が必要となる
②塩酸には強い刺激臭があるため、喉や鼻の粘膜を傷める危険性がある
③塩酸本体はラディカルな反応をしがちなので、素材を傷める危険性はもちろん、素材が傷む上にムラになりやすい
④金属への腐食性が強いので、特に金属成分が多く含まれることがある石材へのダメージが強い
このような理由から、塩酸単体を使用してのエフロの除去にはリスクが伴います。
エフロを除去するのに、市販の塩酸ベースのトイレ用酸性洗剤を使うことがよくありますが、実際使ってみるとエフロの分解力はかなり低め。エフロ除去は、単に塩酸で分解するのではなく、塩酸と界面活性剤の相乗効果によって効率的にエフロが分解され、除去できるのです。
エフロにお困りの業者様にご案内、ご使用いただいているのが弊社の『マイクロクリーナー エフロブレイク』です。
エフロブレイクには反応を活性化するための界面活性剤や、金属の腐食を抑える防錆剤。反応を均一化するための安定剤などがバランスよく含まれており、低刺激臭でエフロの除去に圧倒的な即効性を発揮します。
エフロ除去の施工例①
施工手順:
水うち
⇒刷毛でエフロブレイク原液塗布
⇒5分程度何度も反応させる
⇒水洗い
⇒『マイクロクリーナー ストロング』を30倍程度に希釈した洗剤で中和洗浄
⇒完了
エフロ除去の施工例②
施工手順:
水うち
⇒刷毛でエフロブレイク原液塗布
⇒10分程度何度も反応させる
⇒水洗い
⇒マイクロクリーナー ストロングを30倍程度に希釈した洗剤で中和洗浄
⇒完了
エフロの再発生を抑止する方法として、含侵タイプのコーティング剤の塗布をお勧めしています。
『マイクロシーラー エフロブロック』はシロキサン化合物が主成分の、エマルジョン(水の中に油が、もしくは油の中に水が分散している)タイプの浸透反応型劣化吸水防止剤です。
塗布面の風合いを変えることなく素材の吸水性を抑えることができ、エフロの抑止効果に優れています。
エフロ除去の施工例③
もうひとつ、エフロを削り取る方法もご説明します。
エフロの発生にもいろいろな段階があり、発生直後の軽く擦れば簡単に取れるものから、石のようにガチガチに固まっていて、ちょっとやそっとではびくともしないものまで千差万別です。特に難易度が高いのがガチガチに凝り固まったエフロの除去です。
そのような固まったエフロを除去するには『ダイヤブラシ』が効果的です。最後に残った細かなエフロは、前述のエフロブレイクで除去可能です。
施工手順:
ハンドポリッシャーにダイヤブラシを装着し、水を出しながらブラッシングする
⇒細かな部分はエフロブレイクで除去
⇒水洗い
⇒マイクロクリーナーストロングを30倍程度に希釈した洗剤で中和洗浄
⇒乾燥後に素材の色味を濃くするためコーティング剤『マイクロシーラー セラミックガード』を塗布して完了
エフロブレイクなどの酸性洗剤を使用した後には、必ずアルカリ性洗剤の『マイクロクリーナー ストロング』で中和洗浄を行ってください。
その工程がないと素材にダメージを与える危険性があることはもちろん、特に強アルカリで結合されている目地のモルタル部分が中性化してしまい、後にひび割れの原因となります。十分お気を付けください。
著者新井田康介(にいだこうすけ) 株式会社タックアンドカンパニーは、国内初の石材メンテナンス会社として1985年に創業。 株式会社タックアンドカンパニー HP |