掃除ロボットと言えば、世界中で大ヒットした家庭用自動掃除ロボットのルンバを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。
昨今、業務用の掃除ロボットは、人手不足の深刻化 に伴い、ニーズが高まっています。
すでに飲食業、小売業といった店舗や、病院・介護施設、ホテルなどの施設、人手不足や高齢化が課題を抱える業種を中心に活用されています。
2020年に発生した新型コロナウィルスの感染症対策としても注目を集めています。ここでは、業務用の掃除ロボットの種類や、活用のメリットについてご紹介します。
清掃ロボットとは
清掃ロボットは、自動的に動いて掃除をするロボットのことで、一般的に「ロボット掃除機」「ロボット・クリーナー」「掃除用ロボット」などと呼ばれています。
家庭用と業務用があり、ほとんどが床上を這うようにして動きます。
ロボットの語源は、チェコの劇作家カレル・チャベックが戯曲「ロッサム万能ロボット製造RUR」(1920年)の中で、「人造人間」という意味でロボットという言葉を使ったことに由来しています。
産業用ロボットとしては1960年にアメリカの新聞に登場しました。
日本では、産業用ロボットが初めて実用化されたのは1967年頃だったと言われています。その後、日本では下記のようにロボットの時代が進んでいきます。
●1960年代後半:黎明期
●1970年代:実用化時代
●1980年代:普及元年
1981年には、日本におけるロボットメーカーの数は190社に達し、昨今では、ロボット保有国の多さで他国をリードするようになりました。
2001年には、日本で初めて、富士重工業と住友商事によりオフィス用清掃ロボットが実用化。この清掃ロボットは、2006年に「今年のロボット大賞」(経済産業大臣賞)を受賞しています。
清掃ロボットを導入するメリット
①生産性の向上
清掃業務が軽減されると従業員が本業に従事する時間が増えて、従業員の勤務時間の短縮にもつながります。働き方改革の推進や業務効率化の面でも効果があります。
②ムラを軽減できる
人間が清掃を行う場合、経験や能力に個人差があり、同じ作業時間でもホコリや汚れが取り切れず床面に残ってしまうことも。一方、清掃ロボットを使うと掃除ムラが生じにくく、いつどのように行っても均一な仕上がりを提供することができます。
③感染症対策ができる
2020年に発生した新型コロナウィルスにより、清掃ロボットによるオフィスの感染症対策も注目されるようになりました。米疾病対策センター(CDC)の研究によると、床に広がったウィルスがホコリなどに付着して飛び回ると感染の原因になると判明しています。最近では、感染対策に特化したロボットも出てきています。
各社の清掃ロボットの販売台数は毎年ほぼ倍増してきましたが、2020年は急加速しました。コロナウィルス感染拡大でロックダウンが始まると同時に販売が急激に増えた国もあるようです。
④人件費の削減
社内で清掃のための人員を確保する場合、また、外注する場合も、コストがかかります。外注の場合、早朝や深夜の場合は、割増になることもあります。一方、掃除ロボットを使えば昼夜問わず一定のコストで清掃が可能。清掃を効率化できるだけでなく、セキュリティ面の配慮も少なく済みます。
業務用清掃ロボットの市場規模
矢野経済研究所は2021年に「業務用掃除ロボット市場に関する調査」を実施しました。2020年度の業務用掃除ロボットの市場規模は、メーカー出荷ベースで32億2,600万円(前年度比63.1%増)と推計されました。
詳細を見てみると、床掃き(集塵)ロボットが構成比を高くしている一方で、床洗浄用も毎年拡大し存在感を高めています。
床掃きや床洗浄などに使われる業務用ロボットの既存の需要先は、大手ビルメンテナンス事業者に依存傾向にあり、販路に変化がなければ需要拡大のスピードは遅延します。
需要を拡大するためにはそれ以外の新規需要が必要です。今後ビジネスチャンスがあるとしたら、地方や中規模のビルメンテナンス事業者に期待ができるでしょう。
2024年度の業務用清掃ロボット市場は、100億円規模も視野に入ってくると推測されています。
特に、2021年度以降に投入された新製品ではこれまでにない「自動充電」「給排水機能」「平行移動」「大空間への対応」などの性能が装備され、作業の効率化や人件費の削減、作業環境への適応性が一層向上していくでしょう。
清掃ロボットの種類
今後ますます目にする機会が増える清掃ロボットにはどのような種類があるのでしょうか。さまざまな観点から種類を見てみましょう。
●ドライ型・ウェット型
・ドライ(除塵)型
ドライバキュームを自動化したものでセンサーで人や物を回避しながらハードフロアやカーペットフロアに落ちたホコリやゴミを回収するロボットです。
■ソフトバンクロボティクス:Whiz i
■パナソニック コンシューマーマーケティング:RULO Pro
・ウェット(洗浄)型
自動床洗浄機を自動化したもので噴水口から複数回水を出しながら、水拭きします。主に、商業施設用のハードフロアなど、人間の手では作業が大変な床洗浄を効率的に清掃します。
■日本信号:クリナボ(CLINABO)
■ガウシアン:SCRUBBER 50
●搭乗式・自律式
・自律式
自律型ロボットとは、人間が操作をすることなく自分自身で判断をして行動するロボットのことで、センサーで家具を避けながら自律走行し、掃除が終わると自ら充電器に戻ります。決められたルートを移動して着実に清掃するための業務を自動化します。
■マキタ:ロボットクリーナRC300DZ
・搭乗式
歩行型よりもボディが大きく、1名が本体に搭乗して洗浄が可能です。多くは座席がついていますが、立ったまま運転できる「立乗型」タイプもあります。汚水タンクなどが大きいため、工場や空港などの広いスペースも短時間で効率よく洗浄できる点が特徴です。
■テナントカンパニー:T380AMR
●ティーチング方式・マッピング方式
・ティーチング方式
清掃スタッフが乗って清掃するとそのルートを学習、人がロボットに覚え込ませる方式です。実際に走行するルートを全て覚え込ませるため、熟練スタッフの作業の再現が可能になります。
作業中にティーチング時とは異なる状況(障害物や人)をセンサーが感知した場合には回避して作業を続けます。
■アマノ:EGrobo
・マッピング方式
マッピング方式は手動で作業エリアの外周のみをティーチング、あとはフロアを自動で周回させることで情報を取得し、オートマッピングを行います。人のサポートなしに、簡単にマップを作成できるのが特徴です。
■マクニカ:Neo
さいごに
清掃ロボットのメリットや、種類ごとの特徴をご紹介しました。清掃ロボットがオフィスや工場に導入されると、人による清掃業務を機械に代替することができます。
物理的な負担が減り、従業員の満足度の向上、退職率の低下、人手不足の解消にも有効になるでしょう。
現状、wi-fiを通じた遠隔操作やビルに設置されたセンサーと連動できる清掃ロボットはほぼありませんが、今後IoTの技術やスマートビルディングが進化するにつれ、これらが実現することで清掃ロボットはより身近になっていくと考えられています。
【記事を作成する際に参考にしたサイト】
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2957
https://japan.cnet.com/article/35110993/
https://robotstart.info/2019/01/31/mec-autonomous.html
https://www.polisher.jp/page/171
https://evort.jp/article/cleaning-robot
https://globe.asahi.com/article/13755831
https://jsdkk.com/home/glossary/glossary-autonomousrobot/
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01596/00012/
https://www.macnica.co.jp/business/servicerobot/products/901/
https://www.rentio.jp/matome/2021/03/mapping-robotcleaner/
https://www.youtube.com/watch?v=vPRcgkmVXl0
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