2021年12月27日 に発表されたEmergen Research(カナダのリサーチ会社)の調査によると、世界のスマートビルディングの市場規模は、2028年に1417.1億米ドルに達すると予測されています。
新型コロナウィルスの発生は、世界中に悪影響を及ぼし、ビルの使用は制限や封鎖を余儀なくされました。
しかし、2022年に入り、徐々に緩和され、オフィスビルや商業ビルが再開しています。
企業は今、改めてより効率的で安全な職場を模索するようになってきています。
ここでは、スマートビルディングの概要と、今後の展望についてお話しします。
スマートビルディングとは何か
スマートビルディングの目的は主に、建物の保守管理の効率化や、利便性向上などを実現することで、利用者にとって具体的には下記のようなメリットが得られます。
①省エネルギー
決定的なメリットが、ビジネスのコスト削減につながるエネルギーの節約でしょう。
例えば、センサーで部屋が監視されているので、人がいない場合には自動的に照明がオフになります。
さまざまな種類のセンサーが状況を感知し、不必要な時、何かが壊れた時、災害時に詳細な情報を提供し、適切な対応を取ることができます。
夏場には、自動的にピーク時の電力消費を抑えることも可能です。
②業務の効率化
スマートビルディングを取り入れると、下記のように、建物で仕事をしている社員の管理も可能です。
- ・出社時には顔認証により出勤を記録
- ・自動的に社内の業務システムへのログイン
- ・自分の席に座ると同時に、パソコン上でその日に行うべき業務のリストを表示させる
- ・会議の時間になったら、社員に対して参加を促す
③AIを駆使したロボットとも融合できる
昨今IoT技術の進化により、スマートビルディングだけに限らず、家電製品などさまざまなものがインターネットに接続されています。
今後は人工知能の進化とともに、より多くのものがIoTに対応すると考えられます。その1つが、スマートロボットです。スマートビルディングの職場では、例えば人手不足を解消するためにこのような最新技術を取り入れることも可能になるのです。
ビルオートメーションシステムとスマートビルディングの違い
スマートビルディングの先駆けは、「ビルオートメーションシステム(BAS)」で、始まりは 1950 年代末期と考えられています。
BASもスマートビルディングも、設備の操作や管理をネット回線によってデジタル化して効率化するのは同じです。ただ、下記の点において異なります。
・BAS
基本的にビル内に、システム管理室を置くことを想定
・スマートビルディング
IoT技術を利用し、ビル外からの遠隔管理や遠隔操作も可能
スマートビルディングでは、ビル外からも遠隔操作できる点が大きく異なります。BASの進化系がスマートビルディングと捉えられています。
スマートビルディングは1980年代頃からアメリカで建設されるようになったと言われており、日本においては1980年代末から普及していき、下記のような推移をたどってきました。
・1990年代
インターネットが一気に浸透した1990年代に、ネット回線を利用したリモートによる管理を可能にするべく様々なシステムが模索されるように
・2000年代
ビルマネジメントシステムにおける通信技術の標準化が進む
・2010年
この年に発生した東日本大震災の復興予算で、ビルマネジメントシステムに対する補助金が出されるように。このことが後押しして首都圏を中心にスマートビルディングが増加していった
現在日本では、民間だけでなく、総務省や経済産業省が積極的に取り組みを進めています。
スマートビルディング、スマートシティの違い
スマートビルディングと聞くと、スマートシティをイメージする方もいらっしゃるかもしれません。
スマートシティとは、IoT先端技術を駆使し、生活インフラサービスを効率的に管理・運営すること。人々の生活の質を高めることで継続的な経済発展を目的とする新しい都市です。
世界的には人口増加対策として各国が導入していますが、人口減少している日本の場合は、他国と背景が少し異なります。日本では、今後将来労働力が不足する見通しであり、これまでの経済成長に陰りが予想されていることから、「労働力確保」の意味合いが強く、都市における「居住性」が重要です。
この課題解決のためにIoTやセンサー、ビッグデータをはじめとした技術を取り入れたスマートシティに期待が寄せられています。
2020年、「東京ポートシティ竹芝」が建設されましたが、この建物はスマートシティの要素を持つスマートビルディングでもあると言えるでしょう。この建物は商業施設ビルとして、下記のような画期的な機能を備えています。
・リアルタイム情報の見える化で混雑を回避
エレベーターホールや施設の混雑状況のデータをリアル配信。
・リアルタイムデータ連動型デジタルサイネージを活用
飲食店舗の空席情報をデジタルサイネージ上に配信し、データと連動して、割引や限定クーポンも配信。
・AI カメラやWi-Fi データで施設利用の傾向を分析
AI カメラやWi-Fi のデータを解析し、各店舗の利用の傾向情報が分析され、テナントは数値に基づいたマーケティングデータが得られる。
・施設内データ活用・連携による効率的なビル管理
施設内データを集計・可視化。WEBアプリケーションで異常を検知。
ビルメンテナンス業界への影響
スマートビルディングをめぐる市場は、大手ゼネコンや大手不動産デベロッパーをはじめ、ファシリティマネジメント会社、設備機器メーカーまで、参画者は広範囲に及びます。
スマートビルディング化が進むことによって、ビルオーナーやビルメンテナンス会社にはどのような影響があるのでしょうか。それぞれの視点で見てみましょう。
ビルオーナー・ビル管理会社
ビルオーナーやビル管理会社は、スマートビルの導入によって、ビル全体のあらゆる設備、システムの能力を最適化し、省エネや運用効率などの目標を達成できるようになります。
最新の施設運用システムに投資すれば、大きな投資効果を得ることができるでしょう。
一方で、仕組みを構築するのに多額のイニシャルコストが生じる点、リスク対策が必要である点を踏まえておく必要があるでしょう。
スマートビルディングは一元管理が可能ですが、このメリットも表裏一体となります。万が一中央制御装置にトラブルが起こると、建物全体に甚大な影響を及ぼすリスクもあります。
トラブルが発生しないような対策、万が一何か起きたときに、迅速な対応ができる体制を整えなければなりません。
ビルメンテナンス会社
スマートビルディングが進むことで、ビルメンテナンス会社には下記のような需要が生まれています。
・清掃ロボット
オフィスビルの管理コストの削減という観点で、スマートビルディングとセンサーが連動した清掃ロボットが注目されています。
広いオフィスでも、作業順路など1台のロボットが学習すれば複数台で共有できる掃除ロボットなども登場しています。
・ロボットによる常時マネジメント
オフィスに整備されたセンサーにより、ロボットが24時間の警備代行することも可能です。
上記は、設備管理のコスト削減していくことが期待されています。
さいごに
日々進化を遂げるビルを活用することで、企業が競争力を高めることも可能になるでしょう。
新型コロナウィルス感染拡大以降の「非接触」や「ソーシャルディスタンス」といったキーワードも、引き続きスマートビルディングに求められる要素になっていきます。
【記事を作成する際に参考にしたサイト】
https://ledge.ai/2021-02-17-743895863602cf3665a678/
https://www.softbank.jp/biz/blog/business/articles/202003/overseas-smart-city/
https://www.teramoto.co.jp/columns/8530/
https://www.softbank.jp/biz/blog/business/articles/202003/domestic-smart-city/
https://mvno.freebit.com/column/iot-m2m-installation/iot-building-management.html
https://www.teramoto.co.jp/columns/8530/
https://tokyo-portcity-takeshiba.jp/about-us/smart-building/
http://totalsystemdesign.la.coocan.jp/files/birukan.pdf
https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/smartcity/
https://cybersecurity-jp.com/security-measures/33895
https://www.digital-transformation-real.com/blog/challenge-smart-building
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