多くのビルメン企業は業務改善に対する意識が薄く、旧態依然としたアナログ的手法を継続して行っていることです。
業務の効率化を図り生産性を向上させるにはDXへの取り組みを図っていく必要があると考えます。DXとは何か、その概要と必要性を述べてみます。
■DXとは
DX(Digital Transformation:デジタルトランスフォーメーション)のTransformationは「変化、変形、変容」を意味する語句であることから、「デジタルによる変容」と直訳されます。
デジタル技術を用いて効率化を図る、いわゆるデジタル化とは違い、DXは、その先を見据えて変化させるという部分において重要なことと解釈します。
要するにデジタルによる技術を用いることによって一般的な生活及びビジネスシーンを変化、変容させていくことを言います。
DXについては厳密な定義づけがされている訳ではありません。
近来の社会においてさまざまなデジタル機器やテクノロジーの発達により、先進的な生活改善が進められてきたことによる学問的なビジネス用語として浸透してきたものなのです。
日本では経済産業省が
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、DX を実現していく上では、デジタル技術の活用によって業務形態をどのように変革するかについての経営戦略や経営者による強いコミットメント、それを実行する上でのマインドセットの変革を含めた企業組織内の仕組みや体制の構築等が不可欠である(経済産業省DX推進ガイドラインより抜粋)」
といった解釈の表明によってDXの推進を行う方針をたてています。
(https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/dx/dx.html:経済産業省産業界におけるDX推進施策について)
〇DXのXって何?
DXは“Digital Transformation”の略称であるからDTではないかと疑問に思われますが、「Trans」は接頭語で「変化する」「横切る」を意味する「Cross(クロス)」と類義語とされています。
すなわち「X」という英字は交差するという意味も表しますから、英語では「Trans」を{X}と置き換える書き方があることから、Trans=Xにされている訳です。
■DXとITの相違点
IT(Information Technology:インフォメーションテクノロジー)」とはコンピューターネットワークを使った情報技術を総称する用語です。
IT化するとよく聞きますが、IT化とは従来連絡手段が電話や手紙などによっての伝達だったのに対して、パソコンやスマートフォンによるEメールやチャットツールによって効率化が図れる手段を言います。
また、従来の紙ベースであった種々な情報、マニュアルなどをパソコンに入力して、整理、蓄積するデータベース化することによって、膨大な情報のなかから必要とする目的の情報を検索して取り出せます。
IT化とは明確な定義が存在するわけではありませんが、上記のように連絡手段やデータの活用によって業務活用化が図れます。
DXが前述したとおり先進的なデジタル技術のツールを活用することにより、製品やサービスなどの業務の効率化を向上させるための変革を目的とするものであることから、ITは既存プロセスの効率化を図るものであり、DXはIT化を導入して活用する目的の手段であると考えます。
■ビルメンテナンス業界/DXの必要性
ビルメンテナンス業務はマンパワーによるところが多いですから、人員不足によるシフト管理の難しさによって品質及びサービスの低下に繋がります。
通称産業省においても“働き方改革”による業務改善に対応するためにもデジタル技術の導入が質の向上に必要と考えます。
〇DXの方向性
DXを進めて業務プロセスに確実な成果を出すには、何をどのように改善していくのか明確な目的・目標を定めて決定しなければなりません。
目標を定めずにデジタル技術のみを導入したのでは、何をどのようにして、何が改革できたのかが判然としないままで終わってしまいます。
まずは、何のためにと何を実現したいのかをDXは目的達成のための手段とすることです。
■DXの進め方の基本
DXを進めていくには、経営者の理解はもちろん社内全体での取り組みが必要となります。デジタル技術の習熟したスタッフ作りと、種々な形での応用と活用への対応が求められます。
DXについて、ビルメン業界の現状の在り方など様々な角度からの情報収集も行い、自社にとってより良いDXの取り組みを的確にまた円滑な対応ができるように進める準備をしていくことが大切です。
〇DX取り組みへのステップ
①経営者の理解
企業内において先進的な改革を図るのであれば、企業トップの理解と同意が必要です。企業が目指すビジョンがDXによって実現化する目標と合致していなければなりませんので経営陣との同意は不可欠なものとなります。
②何のためにDXへの取り組みを進めるのか、目的を明確にします。
目標を定めずに単にDXをしてみたいだけでは、単にデジタル化のみ先走ってしまって収拾がつかずに終わってしまう恐れが生じます。
具体的に目的を設定し、デジタル技術は目的達成のための手段であると認識することが大切です。
③DXを進める体制づくり
経営者の理解を得、目的、目標が決定したら、どのような体制で進めていくのか整備づくりをします。PDCAによるプロセスの仕組みを作り、仮説の検証も必要です。
自社で活用しているデジタル機器環境の把握、DXに関わるスタッフの確保も必要となります。
人材確保及び育成には相応のコストがかかることも想定できますので、外部リソースの活用も視野に入れておきます。
また、ICT(情報通信技術:ネットワークの活用によって知識や情報を共有しコミュニケーションを図る)の現状を可視化して評価します。
④デジタライゼーションでDXの推進
DXを推進するためのワークフローを構築し、ICTシステムやWEBサイト上にあるアプリケーションソフトやクラウドサービスを積極的に導入して、DX推進プロセスにデジタライゼーション(デジタル化)します。
従来までアナログ式で処理されていたものをデジタル化することによって利便性を図り、より効率化を推し進めます。
⑤PDCAにより検証と改善を行います。
DXを推し進めるにあたり、PDCAフローによって実際に効果がでているのか常に状況の確認を行い、継続的に検証して評価し、問題点を改善して行くことが大切です。
■まとめ
ビルメンテナンス業界に共通する問題点は一律に「人手不足」が挙げられます。
従来から行使されてきたアナログ的手法によって業務効率が悪く、様々な部分でコストがかかり、経営上にも悪影響を及ぼしています。
業務効率の改善を図るには、企業として毅然(きぜん)としたビジョンを確立し、収益の向上を図る上でもコストはかかりますが、将来に向けてのミッションとしてDXを進めることで、市場での優位性を高め、企業として発展していくのではと考えます。