ファシリティマネジメントと呼ばれる施設管理と設備管理はどのような違いがあるのかを取り上げてみました。
施設管理とは
施設管理とはビルマネジメント通称ビルマネと呼ばれ、プロパティーマネジメントとも呼ばれています。
また近年では施設管理を経営活動一環の取り組み事業として「ファシリティーマネジメント:略称FM」という名称のとらえ方が広まってきています。
ビルマネとは、建物の所有者が建物の運営業務全般を業者に委託して管理するものです。主な関わる業務として、
- 建物内の規制及び規則などの作成
- 建物に入居するテナントなどの誘致と対応
- 賃貸借に関する業務の代行
- 建物内の設備等の維持管理
- 建物における修繕計画の作成
を仕事として行います。
〇ファシリティーマネジメント
「Facility Management:ファシリティーマネジメント」(略称FM)のファシリティーとは施設、設備、土地といった意味の他に便利さであるとか便宜性といった意味も含まれていて、企業が施設や設備の維持管理だけでなく、それらを利用する人々にたいしての環境面すべてを含めたものをいいます。
企業においての経営資源については「ヒト」「モノ」「カネ」の三つの他に「情報」と「建物」を加えて五つが認識されるようになっています。
ファシリティーマネジメントは前述したファシリティーの経営面において最適な状態で価値を高め向上させるための管理方法となります。
従来の設備の維持や保全といった管理のみにとらわれず、施設の有効活用について戦略的に活動していくことを指します。
具体的には、施設(建物)の設備の維持管理、修繕といった保全はもちろん、災害や防犯対策、施設内外の美化活動などにも重きをおき、施設を利用する人々が快適に過ごせる環境作りもポイントとして挙げられます。
戦略的には1~2年で結果を求めるのではなく、中・長期的に視点をおいて運営計画をたて、実行していくことが大切とされます。
〇FMの利点
ファシリティーマネジメント(FM)の計画立案によって施設(建物)の有効活用の促進、断熱構造の改善や太陽光パネルなどの設備改善による省エネルギー対策のニーズ活用によって維持費のコストダウン化が図れます。
近来ではIoT(モノのインターネット化)と呼ばれる先端テクノロジーが普及しています。家電や自動車の運転機能などがインターネットに接続させる技術が進んでいます。
施設管理の面においても無人の受付、防犯、施設内の予約などの高機能システムについても開発が進み、導入の検討をはかる企業が増えてきています。
「施設の有効活用」「維持費のコストダウン化」「施設管理のIoT化」といったFMへのニーズの高まりによって経営面での施設管理に関する考え方と位置づけに変化が生まれ、今後の施設管理の市場も増大していくことが期待できます。
〇ファシリティマネージャー資格制度
施設(建物)などの設備管理に関しての技術資格とは異なり、施設における課題や問題点、目標などを明確にして、P(計画の策定)・D(実行)・C(調査)・A(評価)を統括する人材(ファシリティーマネージャー)を認定するもので、公益社団法人「日本ファシリティーマネジメント協会」、一般社団法人「ニューオフィス推進協会」、公益社団法人「ロングライフビル推進協会」が協力して制度の認定を実施しています。
施設管理と設備管理の相違点
建物に関わる仕事として「施設管理」という語が見受けられますが、この「施設管理」とは、一般的に建物のオーナーの代わりに建物の管理を行う仕事です。
入退居者及びテナントなどの対応、その建物に関する運営や管理などの業務全般を所有者に代わり代行するのです。
一方、設備管理は建物に付随する設備機器・システムなどの保全管理が主な業務であり、建物自体と設備の点検保守・修繕などを行います。
この項でいう施設管理業務とはビルメンテナンスに関するもので、大きく分けて「清掃業務管理」「設備管理業務」「警備保安管理業務」の三つとなります。
・「清掃業務管理」は、施設の衛生的環境を維持管理する業務です。
業務内容は日常的な業務と、週、月、年ごとの単位で行う定期清掃業務、顧客の依頼によって行う特別清掃があり、施設を利用する人々が清潔で快適に過ごせる環境の整備を行います。
・「設備管理業務」は、施設に備えられている各種の設備(空調、給排水、電気設備、防災等)を維持管理します。主な仕事として設備の点検、動作確認、安全管理、劣化の診断、修繕計画の策定が挙げられ、これらの設備機器が不備なく運転管理を行います。
・「警備保安管理業務」は、警備業法に則り、施設内外の秩序の維持及び防犯、防災管理を行う業務で、建築物及び施設を利用する人々の安全を確保します。近年では保安警備のオートシステム化が進み、防犯、防災に対する遠隔監視や制御など、緊急の異常事態等に対応しています。
まとめ
今まで一般的に言われていた施設管理は、ビルメンテナンス業務の一環として施設における設備の保全、維持管理業務として捉えられてきました。
バブル期に急増した施設や建物には多額の維持管理費などマネジメントコストが重く企業の経営を圧迫しているのが現状となっています。
その改善策としての効果を図るものとして施設管理の在り方が“施設の保全維持管理と建築時の機能維持”から経営的な観点に移行して“施設の経営に最適化され、戦略的な施設の運営が必要な要件”とされつつあり、ファシリティマネジメントの効果的な実効性が重要視されるようになっています。