2022年8月3日、東北や北陸は大雨に見舞われています。
山形県や新潟県では記録的な豪雨となり、山形県に大雨特別警報(浸水害)が発表され、道路の冠水や住宅の浸水が相次いで確認されています。
地球温暖化などを要因として、「異常気象」という言葉を多く耳にする昨今、台風や大雨による水害は特に発生しやすいことから、水害対策への理解や対処法の準備は重要です。
とは言っても、
「浸水したときの掃除の仕方、どうすればいいのだろう」
と対処方法が分からない方も多いのではないでしょうか。
実際に大雨や台風で水害の被害に遭った時にどのようにして対応すればいいかをご説明します。
水害が起こったらどうする?清掃の方法について
水害の被害にあった場合には、迅速に清掃をする必要があります。
もし清掃を後回しにしてしまうと、細菌やカビの繁殖、傷や汚れの定着など、被害が拡大する恐れがあるからです。
水害にあった場合には、下記の流れを意識して清掃を行いましょう。
<清掃に入る前の確認点>
- ガス漏れがないかの確認
- 停電していない場合は、浸水で漏電していないか確認する
- 浸水してから時間が経過している場合、カビが発生していることもあるため、まず、十分に喚起する
<作業の流れ>
- 作業着の準備
- 被害状況の記録
- 排水
- 汚れの除去
- 屋内の乾燥
- 消毒
詳しく解説していきます。
作業着の準備
清掃中は、土やほこりが目に入ると結膜炎に、口に入るとのどや肺に炎症を起こすことがあります。
またがれきなどによるケガの可能性もあるため、作業着はしっかり準備して清掃を行うようにしましょう。
用意すべき作業着は以下です。
・タオル
熱中症の予防や汗拭き、尖ったものに触れる時の防護布などの役割を果たします。
特に熱中症、屋内で長時間作業をする場合には非常に危険です。タオルは忘れてしまうことが多いですが、意外と重要です。
・手袋
手袋は、尖ったものでも問題なく持ち運べるようにできるだけ厚いものがおすすめです。軍手では薄いのでなるべく控えます。
・長靴
夏は暑いからという理由でサンダルを使用する方もいますが、水害で川や下水から流れてきた水は、有害物質や細菌を多く含む場合があります。
オフィスや工場の場合は、屋内の汚れや油などを含んでいます。
尖ったものを踏んでしまう恐れもありますので、厚底のものを使用しましょう。
ゴーグル、マスク、長袖/長ズボンも忘れずに用意しましょう。
被害状況の撮影
被害状況を撮影しておくと、罹災証明(被害の大きさを示す証明書)の取得時や保険金請求時、原状回復費用(借りた時の状態に戻すための費用)の支払い時に役立ちます。
身の安全が確認できたら、片付けや修理の前に必ず撮影しておきましょう。
記録がなく、口頭説明だけになると、各種の申請が認められない可能性もあります。
できるだけオフィスや工場内を隅々まで撮影し、どのような質問があっても根拠をもって答えられるようにしておきましょう。
<写真の撮り方のポイント>
・建物の外
カメラやスマホでなるべく4方面から撮り、浸水の場合は、浸水の深さが分かるように撮影します。
メジャーをあてて「引き」と「寄り」で撮ると被害の大きさが分かります。
・建物の中
内壁、床、窓、出入り口、便器など、被災した部屋ごとの全景、「寄り」の写真を撮影します。
排水
床下や床上に水が溜まっている場合は、まず排水から始める必要があります。
水の量が少ない場合や、タオルやぞうきん、スポンジで吸い取ります。
水の量が多い場合は、排水ポンプを使用すれば時間と手間が省けるのでおすすめです。
排水ポンプはホームセンターで売っている場合もあります。
工場など大規模な場所で浸水が発生した場合は、業者に依頼するようにしましょう。
排水作業を後回しにすると、細菌やカビが繁殖する原因になります。
また、完全な排水ができなかった場合でも、同じように繁殖してしまいます。
排水は早急かつ確実に、行うようにしましょう。
屋内の乾燥と消毒
乾燥作業は、水害に対する清掃で非常に重要な項目です。
木材の腐敗、悪臭の発生、細菌やカビの発生、など様々な被害を発生させます。
業務用扇風機の利用や窓を開けての換気など、乾燥を促す作業を行います。
工場や広いオフィスなどでは、長い場合で1ヶ月程度要する場合も。
できるだけ早く着手し、専門業者のアドバイスなども取り入れながら、できるだけ早く乾燥を完了させましょう。
クレゾール石けん液や消石灰などを利用して行う消毒作業も大切です。
一方で、床下浸水であれば消毒を推奨していない自治体や専門業者もあります。
状況に応じて、消毒すべきか否かの判断をするようにしましょう。
参照元:
水害対策のポイント
上記は水害が起こった後にどのように対応すべきかについてお話ししましたが、次に、水害が起こる前に、何を準備すべきかについてご説明します。
①備蓄を用意する
大規模な浸水が発生した場合は、オフィスに数日間泊まらなければならないことも。
そのために、食料・飲料水・簡易トイレ・寝袋などを十分な量用意しておきましょう。約2週間泊まり込んでも問題ないようにしておけば安心です。
・飲料用の水
人間は体重のおよそ6〜8割が水分からできており、尿や汗、呼吸などを通じ1日2〜3ℓの水を排出しているため、毎日排出分と同等の水を摂取する必要があります。
・食事用
煮炊きや汁物を作る際に水を必要とします。
食事用の水は口の中に入るため、飲料水として用意しましょう。飲料用+食事用として1人1日3ℓを3日分用意しておくと安心です。
・衛生・風呂用
生存に不可欠ではありませんが、できれば、手洗いや歯磨きの分も準備しましょう。
災害の際にお風呂に入ることは現実的ではないので、衛生対策のためにウェットティッシュなども用意しましょう。
②初動対応を明確にする
水害を事前に予測しておいても、被害を避けられないことはあります。
災害直後はどうしても混乱が生じます。
例えばオフィスで水害が起こった際、平時なら効率的に動けていたのに、人の動きがバラバラなってしまうことも。
不測の事態を防ぐために、速やかに緊急時体制を構築し、指揮命令系統のもとで被害状況を正確に把握・情報共有を行う必要があるでしょう。
その場で応急処置として浸水を防ぐなどの対処をするだけでも、被害を抑えることが可能です。下記の2点を念頭に置いておきましょう。
・排水溝を塞ぐ
・浅めの浸水を防ぐためのグッズを用意しておく
③水害に対応したBCPの策定
BCP(Business Continuity Plan)とは、企業や団体における災害など、緊急事態発生時の事業継続のための計画のことを指し、BCPに取り組むことを「BCP対策」といいます。
各企業や団体は、災害の中でも、水害に対応したBCPも忘れずに事前に策定・周知してください。
サーバーなどの重要機械は、高層階に常設してください。浸水時であっても、機械を守ることができます。
重要書類は、災害時に迅速に避難できるように予めリストアップし、また、クラウド上や他拠点へのバックアップもご検討ください。
JICE 国土技術研究センター一般財団法人が、企業が「水害対応版BCP」を作成するうえでのポイントを紹介しています。
■「水害対応版BCP 作成のポイント」
https://www.jice.or.jp/cms/kokudo/pdf/bcp/bcp_point.pdf
是非自社独自のBCP対策を作成し、事前に対策をしておきましょう。
参照元:
JICE国土技術研究センター:PDF
<<おわりに>>
どうしても川沿いや低地にある建物は、被害を受けやすくなってしまいます。
新型コロナウイルス蔓延が収まらない昨今、自然災害が発生すると自然災害の被害だけでなく、避難先で集団感染が発生するなどリスクがあります。
このようなさまざまなリスクを避ける一番の水害対策は「立地を選ぶ」ということかもしれません。
これから工場やオフィスを構える場合は、水害リスクの低い土地をハザードマップなどで確認しながら選ぶ必要があります。