SDGsは今やほとんどの業種で対策を行っています。もちろんビルメンテナンスも例外ではありません。
本記事では、ビルメンテナンスでのSDGs対策の一つであるエコチューニングについて紹介します。
エコチューニングは、環境省の登録商標です。
脱炭素化社会、つまり二酸化炭素の排出量をゼロにする社会の実現に向けて、業務用等の建築物から排出される温室効果ガスを削減するため、建築物の快適性や生産性を確保しつつ、設備機器・システムの適切な運用改善等を行うことをいいます。
ロゴには、「エコチューニングの取り組みを進め、未来の地球環境を守る」というメッセージが込められています。
エコチューニングに取り組むメリット
日本はもうCO2削減がかなり進んでてこれ以上の削減余地が少ないのに対して、アフリカ諸国は削減余地が大きいので、「アフリカ諸国のCO2削減に投資して、削減分の一部を日本のCO2削減分としてカウントしてもらう」のが一番効果的な気はするよな…https://t.co/O0e76PvKeF
— ultraviolet (@raurublock) November 15, 2022
エコチューニングに取り組むとどのようなメリットがあるの?と聞かれてもあまりピンとこない方が多いかもしれません。
そこで、ここでは企業、オーナーの視点から見る4つのメリットについて紹介していきます。
CO2排出量・光熱水費の削減
平成26年に「エコチューニングビジネスモデル確立事業」が全国194棟の建築物で7ヶ月間の実践を行ったところ、過去3年間の平均に比べてCO2総排出量は7.5%削減、光熱水費は約4億円の削減に成功しました。
節約できた費用はビルオーナー、ビルメンテナンス企業双方の利益となり、かつ脱炭素化社会への大きな一歩を踏み出せるという点で大きなメリットとなります。
また、エコチューニングを始めるにあたり、初期投資が必要な設備を導入する必要はなく、既存設備の適切な運用で成り立つ点も魅力の一つです。
場所を選ばず実施が可能
庁舎、スポーツ施設、病院、福祉施設など、様々な用途で使用される公共施設でCO2排出量・光熱水費の削減が見込まれます。
指定管理者制度で運用している公共施設での実践事例もあり、場所を問わずに実施することが可能です。特定の場所に縛られることなく実施できるのは魅力的です。
エコチューニング推進センターの手厚いサポートを受けられる
エコチューニングを実施したいが詳しいことがわからない。そんな時はエコチューニング推進センターからサポートが受けられます。
大まかな内容としては
「エコチューニング営業活動のサポート」
「専門技術者グループによる技術的支援」
「保険制度の利用」
「設備機器の運転データ収集・分析ツールの利用」
の4つがあり、専門性の高い、確実な情報を入手することが可能です。
エコチューニングは比較的新しい事業であるため、新規参入をしやすい土台が作られているのは大変大きな魅力です。
SDGsに積極的に取り組んでいる証となる
SDGsには17の目標が定められていますが、エコチューニングを行う事により、そのうちの4項目に貢献することができます。
SDGsに取り組むことが推奨される近年において、エコチューニングを行う事は、「積極的にSDGsに取り組んでいる企業」の何よりの証になります。
エコチューニングが貢献できるSDGsの4つの項目
出典:YouTube
先に説明した4つの項目ですが、それぞれどのような活動を通して貢献しているのでしょうか。SDGsの項目に沿って解説していきます。
【7】エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」は、エネルギーの使用状況を分析し削減することにより、CO2排出を減らすクリーンな環境をつくるといった取り組みをさします。
【11】住み続けられるまちづくりを
「住み続けられるまちづくりを」は、気候変動の観点から、猛暑日が続く、暴風雨が吹き荒れる、干ばつが続くといった問題が起こり、住みづらいまちになる可能性を減らしていくといった取り組みをさします。
【12】つくる責任、つかう責任
「つくる責任、つかう責任」は、エコチューニングを広義として捉え、ビルの経営の観点などから持続可能な消費と生産を行うことをさします。
【13】気候変動に具体的な対策を
「気候変動に具体的な対策を」は、温室効果ガスを抑え、地球の気候変動を抑えるという取り組みをさします。地球温暖化が確実に進行している現在、環境問題としてこの項目が非常に大事になると考えます。
エコチューニング技術者の役割
エコチューニング事業者認定制度は、平成28年度から定められた制度であり、事業者認定を受けるための必須資格となっています。
エコチューニング技術者は主に二種類に分けられているため、それぞれどのような役割を担っているのかについて解説します。
第一種エコチューニング技術者
建築物におけるエネルギーの消費実態や特性を把握した上で、設備機器・システムを効率良く運転するためのエコチューニング計画等を策定します。
また、業務管理における継続的な改善方法であるP-D-C-Aサイクルに
「①計画→②実践→③効果検証→④改善」
を当てはめ、実践及び指導をすることにより、消費されるエネルギーを減少させる技術者のことをさします。
第二種エコチューニング技術者
建築物におけるエコチューニング計画等に基づき、その建築物の特性を踏まえて、設備機器・システムの運転管理設定や調整を実行する技術者のことをさします。
また、「第二種エコチューニング技術者」は第一種エコチューニング技術者の指導に基づき、エコチューニングを実行する現場配置の技術者として位置づけられています。
ビルメンテナンス企業のエコチューニング実践事例
ここまでエコチューニングに関する情報を解説してきましたが、では実際にビルメンテナンス企業ではどのようなエコチューニングを実践しているのでしょうか。
3つの企業を例として解説していきます。
株式会社朝日ビルメンテナンス
事務所ビルを事例として挙げており、エコチューニング対策項目としては以下の3つを挙げています。
➀ポンプのインバーター自動制御の見直し
➁設定温度の変更及び外調機運転時間の短縮によるエネルギーの低減
③排気ファンおよびダクト清掃による動力負荷の低減
それぞれ、冬期は冷水ポンプを停止、夏期は空調機設定温度を27℃に変更、排気ファン等の清掃及びベアリング注油による空気抵抗や回転抵抗の改善を実施する事により、電力量、地域熱の削減金額は40万円を超えることに成功しています。
三幸株式会社
ビルの運用状況を正確に把握するために温度、風量、照度などを定量的に計測することを重視して、最適化の提案を行っています。
自社ビルの事例ではエコチューニングの実施により契約電力を85kwから46kwにまで引き下げており、請け負った事例の中では年間の水光熱費を300万円以上、CO2排出量を75t削減することにも成功しています。
タカラビルメン株式会社
“設備機能の最適化”という観点から省エネにアプローチしており、
①空調のフィルター交換や洗浄また熱交換器洗浄による効率改善
②LED照明への交換による熱負荷、電力使用量を削減
③デマンド監視装置導入による電気基本料金を削減
④ポンプへのインバーター制御導入による電力使用量を削減
⑤冷却塔のエレメント洗浄、水質改善による空調負荷改善
⑥換気設備の運転制御による換気負荷削減
⑦電子ブレーカー導入と契約見直しによる基本料金削減
⑧受電設備の力率改善による電気ロスの低減
⑨配管の保温材の改修、補修
といった、9つ観点からエコチューニング項目を行っています。
エコチューニングを実践し、SDGsに貢献しよう
世界のスタンダードとなりつつあるSDGsですが、国内での個人や企業などで実際に取り組んでいる、あるいはこれから取り組もうとしている人の割合は半分にも満ちません。
まだ完全に言葉が浸透していないということもありますが、やはりまだ、どこか他人事のように思っている人も多いのかもしれません。自分たちの将来のために、少しでも取り組むことを心がけたいですね。
ビルメンテナンス企業もSDGs認知度は50%を切っているため、ぜひこの機会にエコチューニングの知識をつけ、SDGsに貢献してみてはいかがでしょうか。