DX事例

ファシリティマネジメントの具体例や導入メリットについて詳しく解説

ファシリティマネジメントの具体例や導入メリットについて詳しく解説

近年、企業の経営環境は大きく変化しており、効率的で快適な職場環境の構築が求められています。

この背景の中で、ファシリティマネジメントが重要な役割を果たしています。

 

ファシリティマネジメントは、企業の施設や設備を最適に管理し、従業員がより快適に、効率的に働ける環境を提供することを目指しています。

 

本稿では、具体的な企業の取り組み事例を通して、ファシリティマネジメントの実際の活用方法とその効果について詳しく解説していきます。

 

ファシリティマネジメントと施設管理の違い

項目 ファシリティマネジメント 施設管理
目的 施設全体の最適な運用を通じて、長期的な資産価値の向上と利用者の満足度向上を図る。 施設の日常的な運用と管理を行い、快適な利用環境を提供する。
対象範囲 施設全体及び関連するサービスやプロセス。 主に施設そのものとその直接的な運用。
活動内容 戦略的計画、長期的なメンテナンス計画、ライフサイクルコストの管理、環境配慮、リスク管理など。 日常の清掃、修繕、保守、セキュリティ、利用者対応など。
考慮する要素 経済性、効率性、持続可能性、利用者の満足度など。 利用者の快適性、安全性、衛生管理など。
時間的視点 長期的な視点で施設のライフサイクル全体を考慮。 短期的な視点で日々の運用を重視。
役割と責任 施設の戦略的な管理と最適化。 施設の日常的な運営と管理。
必要なスキル 経営戦略、ファイナンス、プロジェクト管理、環境管理など。 施設管理、メンテナンス技術、人材管理、コミュニケーションスキルなど。

 

この表は、ファシリティマネジメントがより戦略的で長期的な視点を持ち、施設全体の最適化を目指すのに対して、施設運営は日常的な運用と管理に焦点を当てていることを示しています。

 

ファシリティマネジメントの役割と価値

ファシリティマネジメントは、物資の効率化とコストの適正化を図り、企業経営を支える重要な基盤となっています。

 

人事、ICT、財務と並ぶ4大経営基盤の一つとされ、生産性向上に欠かせない役割を果たしています。特に、バブル崩壊後の経済状況の中で、多くの企業がコスト削減を迫られる中、ファシリティマネジメントは人件費削減の代替手段として注目されています。

 

工場やオフィスなどの施設を最適な状態で管理することで、従業員や利用者は設備を効率的かつ快適に活用できるようになります。

 

また、不要なコストが可視化されることで、経費削減にも寄与します。

一方で、人件費の削減は優秀な人材の流出や長時間労働の常態化など、様々な弊害を引き起こす可能性があります。

 

これに対して、ファシリティマネジメントによる固定費の削減は、建物の機能性や快適性を向上させることで、社員の満足度を高め、生産性の向上に寄与します。

 

労働者人口が減少する中、優秀な人材を確保しつつ利益を拡大させるためには、ファシリティマネジメントの重要性がますます高まっています。

 

日本ではファシリティマネージャー認定試験が設けられ、登録者数も年々増加しており、これは多くの企業がファシリティの重要性を認識し始めている証拠と言えるでしょう。

 

ファシリティマネジメントとプロパティマネジメントの違い

要素 ファシリティマネジメント(FM) プロパティマネジメント(PM)
目的 建物や設備の最適な運用を通じて、働く人々の生産性や快適性を向上させる。 不動産の価値を維持・向上させ、オーナーにとっての収益を最大化する。
主な業務 設備の保守・管理、エネルギー管理、セキュリティ、清掃など。 賃貸管理、リース管理、物件の売買、オーナー代行業務など。
対象 建物や設備を利用する全ての人々(従業員、訪問者など)。 不動産オーナーとテナント。
重視するポイント 効率化、コスト削減、利用者の満足度向上。 収益の最大化、物件価値の維持・向上。
関連する資格 ファシリティマネージャー、ビルディングオペレーターなど。 宅地建物取引士、プロパティマネージャーなど。

 

ファシリティマネジメントを導入するメリット

施設管理(ファシリティマネジメント)は、単にコストを削減するだけではなく、企業の持続可能性、生産性向上、そして社会貢献に直接的な影響を与えます。さらには、今後主流となる、デジタルFM(デジタルファシリティマネジメント)についてもお伝えいたします。

 

メリット1: コスト削減

ファシリティマネジメントの根本的な目標は、運営コストの削減です。

既存の古いシステムや機器を最新のものに更新することで、効率が向上し、結果として多くの経費が削減されます。

 

これにより、人件費やメンテナンス費用などの総支出も減少します。

効率的な業務運営により必要な人員が減少すると、その分オフィススペースを節約できるため、他の用途に利用することが可能となります。

 

メリット2:資産価値の維持と向上

定期的なメンテナンスを行うことで、建物や設備の状態を良好に保ち、耐久年数を延ばすことが可能です。

 

これは、不動産としての価値を長期にわたって維持し、必要に応じて賃貸や他の商業活動で利益を生み出すことができるようにするためです。

 

メリット3:労働環境向上

快適で機能的なオフィス環境は従業員の満足度を高め、その結果として生産性が向上します。

適切に管理された施設では、従業員はより効率的に働くことができ、企業の全体的なパフォーマンスが改善されます。

 

メリット4:環境配慮

エコフレンドリーな設備の採用や、廃棄物の削減は、環境への影響を軽減し、社会全体に対する企業の責任を示すことにもつながります。

 

これにより、企業はCSR活動を通じて地域社会や環境に貢献することができます。

エコフレンドリーは、「ecology(生態・環境)」と、「friendly(友好的な・やさしい)」を合わせた造語です。

 

意味としては、『地球にやさしい』、『環境に配慮した』といった意味で使用されます。

 

メリット5:経営課題の解決と環境配慮の実現

ファシリティマネジメントにより、企業は新しい市場環境や技術の変化に迅速に適応することが可能になります。

例えば、環境に優しい空調システムを導入することで、エネルギー消費を削減し、脱炭素化に貢献することが可能です。

 

他にも、環境配慮型のケミカルを使用することで、環境汚染対策

合わせて、センサーとAIカメラの組み合わせで、清掃回数を適正化することでコスト削減やケミカルを大量に使用することを防ぐことも可能になります。

 

 

以上のように、ファシリティマネジメントはただ施設を管理する以上の役割を持っており、経済的、社会的、環境的な多大な利益を企業にもたらすことができます。これらのメリットを理解し、積極的に取り組むことが、企業の持続可能な成長を支える鍵となるでしょう。

 

レガシーのファシリティマネジメントからデジタルFM(デジタルファシリティマネジメント)へ

現在の日本の建物管理は、レガシーのシステムを多く使用しておりDXが進んでいない状況です。

今後、求められるファシリティマネジメントとして、デジタルFMが挙げられます。

 

項目 現在のファシリティーマネジメント デジタルFM
対応戦略 反応的対応:問題が発生した後に対処します。 先見的対応:IoTセンサーやリアルタイムデータを利用して問題が発生する前に対処します。
データ管理 手動でのデータ管理:データは紙やスプレッドシートで管理され、アクセスや分析が困難です。 統合データ管理:クラウドベースのプラットフォームを使用して情報を中央集約し、簡単にアクセス・分析が可能です。
保守タイプ 定期保守:時間に基づいて実施され、実際の設備の状態は考慮されません。 状態基準保守:設備の実際の状態をリアルタイムで監視し、必要に応じて保守を行います。
エネルギー効率 エネルギーの無駄遣い:非効率な設備や古いシステムにより不必要なエネルギーが消費される可能性があります。 エネルギー効率の最適化:自動調整やエネルギー管理システムにより、不要な時はエネルギー使用を最小限に抑えます。

 

特に空調の自動制御、異常検知が行うことができるようになると、無駄なエネルギーの使用がなくなり、効率的な運用により、コスト削減とカーボンニュートラルの両方を実現することが可能です。

 

デジタルファシリティマネジメントの具体例

今の日本の課題である人材不足の解決、環境負荷軽減、コスト削減を実現することができるデジタルファシリティマネジメントについて具体例を紹介いたします。

 

デジタルファシリティマネジメント:清掃編

トイレにセンサーをつけることで、トイレの清掃回数の適正化やケミカルの無駄遣いによる、コスト削減や環境負荷を実現することが可能です。

 

 

上記の表のように、トイレの使用回数をカウントすることで、どの場所のどのトイレが多く使用されており、逆にどの場所は使用されていないかを見える化することができます。

 

124回に一度清掃することで利用者にとって衛生的に問題がないのであれば、1日に一桁しか利用しない場所の清掃回数を減らし、逆に利用回数の多い部分の回数を増やすことでCSSの向上とコスト削減を行うことが可能になります。

 

現在のメンテナンスは仕様書発注(あらかじめ決められた清掃回数を業務として行うこと)で行われていますが。

性能発注方式(建物の運用から必要なメンテナンスの回数や施工を考える方式)に切り替えることで、既存の管理を脱却することができます。

 

デジタルファシリティマネジメント:設備編

会議室の予約システムと空調を連携や人流把握で空調の自動制御を行い電力コストの削減を行うことができます。

照明機器も、人感センサーを用いて人のいない場所での電力の使用量を削減できます。

 

また、設備の管理も既存の目視点検ではなく、センサーによる異常検知で対応することで、人件費の削減、タイムリーな対応で迅速にトラブルに対応することが可能です。

 

特に設備機器に異常があった場合、人では検知できないトラブルもセンサーであれば感知することが出来るため、トラブルの初動で対応することができます。

 

デジタルファシリティマネジメント:警備編

今までは巡回警備や監視カメラで建物の警備を行っていました。

しかし、監視カメラで録画していても監視している人間は一人、カメラは複数台であれば完全に監視することは不可能に近いです。

 

そこで、現在のAI画像の処理サービスやカメラであれば、過去のデータからの統計で、異常行動を取りそうな人物の行動パターンや、過去のデータとの照合により前科のある人間への対応をすることが可能です。

 

すでに、渋谷の一部のエリアでは画像認証やセンサーと監視カメラの連携により、キャッチセールスをしたことのある人物を記憶して、同じ人物がカメラに写った場合検知できるそうです。

 

そのほか、カメラが車椅子の方や杖を使用している方などを検知した際に、受付や警備員が即座に対応することも可能になっています。

 

ファシリティマネジメント導入の流れ

事前準備:目的と現状の把握

  • 目的設定:ファシリティマネジメント(FM)を導入する具体的な目的を定め、どの部分を改善したいのか特定します。
  • 現状分析:現在の管理状態を検証し、課題点を明らかにします。

 

技術とパートナーの選択

  • 技術の選択:適切な技術(IoT技術、管理システム等)を選びます。
  • パートナー選定:適合する技術提供者やサービスプロバイダーを選定します。

 

戦略策定と計画

  • 戦略計画:具体的な導入計画を作成し、実施フェーズごとの資源配分とスケジュールを決定します。
  • リスク評価:可能性のあるリスクを事前に評価し、対処計画を立てます。

 

資金計画

  • 予算計画:プロジェクト全体の予算を計算し、資金を準備します。

 

コミュニケーション

  • 関係者との調整:プロジェクトの意義を内外に説明し、関係者の協力を得るための戦略を実行します。

 

導入後のステップ:効果的な運用と持続的改善

実装と教育

  • 設備導入:選んだ技術を設置し、適切に配置します。
  • スタッフ教育:新システムの効果的な使用方法を従業員に教育します。

 

運用と最適化

  • 性能モニタリング:新システムの性能を常にチェックし、目標に沿って機能しているか評価します。
  • 問題の迅速な対応:問題が生じた場合、すぐに解決策を施しシステムを調整します。

 

定期的な評価とアップデート

  • 効果の評価:システムの効果を定期的に検証し、改善点を修正します。
  • 技術更新:技術進化に合わせてシステムをアップデートします。

 

改善の持続

  • 持続的な改善プロセス:経験に基づく持続可能な改善措置を周期的に実施し、業務を最適化します。

 

導入前の丁寧な準備と、導入後の継続的な管理がファシリティマネジメントの成功を左右します。計画的に進め、適宜調整を行うことで、施設管理の効率を大幅に向上させることができます。

 

ファシリティマネジメントのまとめ

ファシリティマネジメントは、単に施設を維持管理する以上の役割を持ちます。

レガシーな方法とデジタル化されたアプローチは、それぞれ独自の利点を持っており、適用する環境によって最適な選択が異なります。

 

デジタルファシリティマネジメントは、特にデータの収集と分析能力が高く、リアルタイムでの対応が可能です。

これにより、瞬時に問題を特定し、迅速な対策を打つことができるため、大規模な施設や複数の物件を管理する場合に特に効果的です。

 

一方、従来のファシリティマネジメントも、人間の直感や経験に基づく柔軟な対応が可能であり、すべての業務をデジタル化することの難しい小規模な施設や特定の状況下では依然として重要です。

 

最終的には、これらの方法を組み合わせ、各施設の具体的なニーズに応じたカスタマイズが、最も効率的な運用を実現する鍵となります。

 

施設管理の未来は、デジタル技術の進化とともに更にその効果を増すことでしょう。

 

しかし、その基本となるのは、目的を明確にし、適切な管理戦略を定めることです。ファシリティマネジメントの導入は、単なる技術の導入に留まらず、組織全体の持続可能な仕組みを作ることが重要と言えます。

RELATED

関連記事

NEWPOST

新着記事

RANKING

月間ランキング

HOTWORD

注目ワード

CONTENTS

コンテンツ一覧

掲載記事から探したいキーワードを入力してください。

HOTWORD

注目ワード