現在日本の社会環境は、少子高齢化が進み労働人口が減少しているのと同時に正規労働者と非正規労働者の労働時間や賃金の格差などが問題視されています。ビルメンテナンス業界においてもご多分にもれず人手不足に直面しているのが現状です。
このようなワークバランスの実現の一環として、政府はさまざまな労働関連の法律の改正を進めるために「働き方改革関連法(2018年7月6日制定)」が交付され順次施行されています。働き方改革によっての社会性について述べてみます。
働き方改革関連法って何?
働き方改革関連法は、労働人口の減少やさまざまな労働に関する問題点や働く人たちのニーズの多様化及び企業側における多様化に対する実現の必要性などの問題から政府によって、雇用形態に関わらない公正性をもった公正な待遇などの確保(非正規雇用労働者の保護)、長時間労働の抑制などを目的として労働に関する法律(労働基準法、労働安全衛生法、労働契約法、労働者派遣法など)を順次改正し推進するもので、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が正式法令名です。
参考文書:働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律 理由
働き方改革関連法の概要
働き方改革関連法の法令改正の施行日は改正する事例によって異なりますが、概要として以下に挙げる9つのポイントに大きく分類します。
- 時間外労働の上限規制
- “勤務時間インターバル制度”の導入促進
- 年次有給休暇の確実な取得(時季指定)
- 労働時間状況の客観的な把握
- “フレックスタイム制”の拡充
- “高度プロフェッショナル制度”の導入
- 月60時間超残業に対する割増賃金引上げ
- 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保
- 産業医の権限強化
法改正による対応業務範囲
労働に関する法律の改正によって影響を受ける業務範囲と対策としては、まず就労状況の把握ができているかが必要です。
- ・勤務時間インターバル制が導入できているかのチェック方法。
- ・web打刻やPCログなどによる勤怠管理の客観的データ把握するための基盤整備。
- ・勤務制度の変更や就労実績の把握にともなって集計ロジックを改修する必要があり、給与計算などへ反映させる。
- などの他、勤怠管理の客観的データ把握することにより労務リスクの防止を図る意味で
- ・残業の事前申請の義務化及び残業時間と実績との乖離理由の申請義務化。
- ・有給休暇の一部を時季指定とし、消化促進の仕組みの構築。
- ・申請漏れや遅延の防止の通知機能の整備。
と、労務改善策として
- 現場管理者による早期に業務調整する仕組みを構築し、リアルタイムで労務状況の把握できる体制づくりを推進して、労務状況の可視化と、さらに必要な改革を見据えた基盤整備が求められます。
働き方改革とDX
働き方改革で挙げられている多様な働き方の一例としてフレックスタイム制(労働時間や出退勤時間を従業者自身が決めること)やテレワーク(リモートワーク)があります。
こうした活用はDX(デジタルトランスフォーメーション)と呼び、経済産業省がDXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化、・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義づけしています。
これからの企業に求められるものは、働き方改革の一環としてDXとの関連性を理解、確認して一貫性をもって推進していかなければなりません。
ビルメンテナンス/働き方改革とDX
ビルメンテナンス業務は、衛生管理業務、設備管理業務、警備保全業務の他修繕業務などほぼ専門的な知識を有する人の手によるものが主体であり、少子高齢化に伴う慢性的な人手不足が問題点となっています。
ビルメンテナンス業界に今最も必要な課題が「働き方改革」の推進といっても過言ではありません。
優秀な人員の雇用と育成及び業務の効率化を図って生産性の向上を目指すにはDXを積極的に取り入れて政府が主導する「働き方改革」と「業務改善」に取り組む必要があります。
DXの活用
働き方改革の対応として従業者の就労管理や勤怠管理、コミュニケーションルールシステムの構築には、テレワーク(リモートワーク)を実現してICT(情報通信技術)やITの活用によるデジタル化に取り組み、伝達方法の活用や、長時間労働などの是正や柔軟な働き方及び多様な働き方の実現を目指し、業務の効率化や生産性向上の実現に取り組む必要があります。
まとめ
DXの推進はこれからの企業が生き残っていくためには不可欠の要素と言えるでしょう。
一方、働き方改革は慢性的な人手不足の解消や労働条件の是正及び柔軟な働き方を実現する上で取り組まなければならない課題であって、働き手の労働環境改善を目的としています。
働き方改革とDXは観点が異なっている取り組みですが、DX構築の過程であるデジタイゼーション(デジタル化)、デジタライゼーション(デジタル技術の活用によって事業価値を生み出す)によって業務の効率化を図り、生産性の向上に役立ちますので、働き方改革の実現も可能となるでしょう。