近年、地球規模での気候変動が深刻化し、その影響は各国において顕著になりつつあります。
日本も例外ではなく、異常気象の頻発や自然災害の増加など、気候変動の影響を直接的に受けています。
このような状況の中、国際社会では、気候変動対策の強化が急務とされており、パリ協定に基づく各国の行動が求められています。
日本政府は、これらの背景を受け、2030年までにカーボンニュートラルを目指す野心的な目標を設定しました。
この目標には、国際的な責任の履行、国内の環境意識の高まり、経済的機会の追求、自然災害への対応、そして国際社会でのリーダーシップの発揮など、多角的な意義が込められています。
日本の2030年のカーボンニュートラルの目標
Nationally Determined Contribution (NDC)
Under the Paris Agreement, all Parties shall prepare, communicate and maintain nationally determined contributions (NDCs), representing greenhouse gas emission reduction targets, every five years. On October 22, 2021, Japan submitted its NDC to the Secretariat of the United Nations Framework Convention on Climate Change. The NDC states, “Japan aims to reduce its greenhouse gas emissions by 46 percent in fiscal year 2030 from its fiscal year 2013 levels… Japan will continue strenuous efforts in its challenge to meet the lofty goal of cutting its emission by 50 percent.”
パリ協定に基づき、すべての締約国は温室効果ガス排出削減目標を表す国家決定拠出金(NDC)を 5 年ごとに作成、伝達、維持するものとします。 2021年10月22日、日本は国連気候変動枠組条約事務局にNDCを提出した。 NDCは「日本は2030年度に温室効果ガス排出量を2013年度比で46%削減することを目標としている…日本は排出量50%削減という高い目標を達成するため、引き続き精力的な努力を続けていく」としている。 」
出典:JAPAN GOV
2030年のカーボンニュートラルの目標が決まった背景
日本の2030年カーボンニュートラル目標の設定背景には、複数の重要な要因があります。
国際的な気候変動対策への圧力
日本は、パリ協定を含む国際的な気候変動対策へのコミットメントに対応する必要があります。
パリ協定では、地球温暖化の温度上昇を2度未満に抑え、1.5度への努力を目指すとされています。
日本としても、この国際社会の目標に沿って行動する責任があります。
国内外からの環境意識の高まり
気候変動への意識が世界的に高まる中、国民や企業からの環境に配慮した持続可能な社会を求める声が強まっています。
特に若い世代を中心に、気候変動対策の強化を求める動きが活発化しています。
経済的な機会としてのグリーンエネルギー
再生可能エネルギーの利用や省エネルギー技術の進展は、新たな経済的機会を提供します。
日本は、これらの技術の開発と普及を通じて、経済成長と環境保護の両立を目指しています。
自然災害への対応
日本は気候変動による自然災害の影響を強く受けやすい国の一つです。
台風、豪雨、高温などの異常気象による被害が増加しており、これらに対処するためにも気候変動対策は急務となっています。
国際社会でのリーダーシップ
日本は、気候変動対策の先進国として国際社会でのリーダーシップを発揮することが期待されています。
カーボンニュートラルの目標設定は、その一環としての意義も持っています。
これらの要因により、日本政府は2030年までにより野心的なカーボンニュートラルの目標を設定し、実現に向けて具体的な政策を推進することを決定しました。
海外のカーボンニュートラル2030年の取り組み
取り組みの内容
バイデン大統領は、気候危機に対処するため、科学が要求する緊急性を持ってクリーンエネルギー経済を構築するビジョンを掲げました。
これにより、家庭のコスト削減、高賃金の仕事創出、より健康的な空気と清潔な水を提供します。
気候変動への対策
バイデン政権は、パリ協定への再加盟と米国の世界的リーダーシップの復活を図り、初の国家気候タスクフォースを設置しました。
これには、政府機関を横断する25以上の閣僚級リーダーが参加しています。
具体的な目標
バイデン政権は、以下の目標を掲げています。
- 2030年までに2005年レベルから50-52%の温室効果ガス排出量削減
- 2035年までに100%カーボンフリー電力の実現
- 2050年までにネットゼロ排出経済の実現
- 気候変動とクリーンエネルギーへの連邦投資から得られる利益の40%を不利な立場のコミュニティに提供
バイデン政権は、排出量削減、レジリエンス向上、環境正義の進展、真のエネルギーセキュリティの達成に向けて断固たるステップを踏み出しています。
この連邦政府の動きは、州、部族国家、地方自治体のリーダーシップに基づいて、歴史的な進展を遂げています。
バイデン政権は、気候変動への対策、環境正義の進展、雇用創出をインフレ削減法と二党制インフラ法の中心に据えています。
これらの法律は、アメリカのエネルギーセキュリティを強化し、気候危機に取り組むための歴史的な立法です。
参考情報元:THE WHITE HOUSE
2030年:イギリス(ブライアントホープシティ)の取り組み
取り組みの内容
イギリスのブライトン・アンド・ホーヴ市では、2030年までにカーボンニュートラルな都市を目指す「カーボンニュートラル2030プログラム」を策定しました。
これは住民、訪問者、ビジネスに影響を与え、気候変動と生物多様性の緊急事態の影響を減らすためのものです。
気候変動への対策
イギリスでは、気候変動による極端な気象がすでに人々の生活に影響を与えており、例えば東アフリカの前例のない洪水やオーストラリアの森林火災が起きています。
2022年はイギリスで最も暑い年と記録され、集中豪雨による洪水が多くのコミュニティを襲っています。
具体的な目標
イギリスは2030年までに、2005年レベルから40~45%の排出量削減を目標としており、これはパリ協定で設定された1.5度シナリオに沿ったものです。
この目標達成には、住宅、ビル、車両、産業、農業など、各セクターにわたる排出削減が必要です。
また、プラスチックの使用を減らす、水資源の保護、持続可能な農業への取り組みなど、環境に優しい生活の推進も目指しています。
これらの取り組みは、次世代に持続可能な世界を残すための重要なステップとなっています。
情報参考元:Brighton & Hove City Council
2030年:中国の取り組み
中国における気候変動の現状
最近の歴史で最も厳しい自然災害を経験している中国では、気候変動の影響がかつてないほど顕著になっています。
これにより、政府、企業、そして社会全体に気候変動リスクの理解と、変化する気候への適応が求められています。
特に経済の脱炭素化は、この問題への対応において重要なステップです。
PwCの脱炭素化への取り組み
プライスウォーターハウスクーパース(PwC)は、気候変動の根本的な原因への取り組みを率先しています。
中国の「30-60脱炭素目標」に貢献するため、PwCは2030年までに温室効果ガス排出量をネットゼロにするという目標を掲げています。
これは、気候変動の最悪の影響を防ぐための1.5度シナリオに基づく、科学的な短期目標です。
具体的な目標
PwCは以下のような具体的な目標を設定しています:
- 2019基準年度から2030までにスコープ1および2の排出量を50%削減する。
- 2030までに全地域で100%再生可能エネルギーに移行する。
- 2019基準年度から2030までにビジネス旅行の排出量を50%削減する。
- 2025までに購入する商品やサービスの供給業者の半数が、自社の気候影響を削減するための科学的な目標を設定する。
PwCの姿勢と取り組み
PwCアジア太平洋および中国地区会長のRaymund Chaoは、「気候変動は将来の世代のための課題ではなく、今日私たち全員が共に取り組むべきものです。
PwCでは、日々の運営において排出量を削減し、2030年までに50%の削減を実現するために積極的なステップを踏み出しています」と述べています。
このように、PwCは中国での気候変動対策において重要な役割を担い、実行可能な目標を設定し、積極的なアプローチをとっています。これは、中国のみならず、世界的な気候変動対策にとっても重要なステップと言えるでしょう。
2030年:オーストラリアの取り組み
オーストラリアは、気候変動に対する強いコミットメントを示しており、全州が2050年まで、またはそれ以前にネットゼロを達成することを目標に掲げています。
加えて、オーストラリアは2030年までに2005年レベルから43%の排出量削減を目指しています。
各州では、2030年までの中間目標も設定されています。例えば、ニューサウスウェールズ州は50%、ビクトリア州は50%、クイーンズランド州は30%、南オーストラリア州は少なくとも50%、西オーストラリア州は2020年レベルから80%、首都特別地域は65-75%(1990年レベル)、タスマニア州は2015年にネットゼロを達成しています。
オーストラリアの気候変動への対策
2022年6月16日、オーストラリアは国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局に更新された国家自主貢献(NDC)を提出しました。
この更新されたNDCは、2005年レベルから43%排出量を削減するというより野心的な目標を定め、2050年までのネットゼロへのコミットメントを再確認しています。
具体的な目標
2022年7月1日に設立された気候変動、エネルギー、環境、水資源省(DCCEEW)は、気候変動とエネルギー大臣および環境・水資源大臣の2人の上級大臣によって運営されています。
2022年9月に気候変動法案が上院を通過し、法律となりました。
この法案により、オーストラリアは2005年レベルから2030年までに43%、2050年までにネットゼロの温室効果ガス排出量削減目標を掲げ、毎年の気候変動報告書の作成、気候変動局による年次報告書と将来の排出量削減目標に関する助言の提供、法の運用の定期的なレビューを義務付けています。
参考情報元:Australian Government Climate Change commitments, policies and programs
2030年:カナダの取り組み
取り組みの内容
カナダは気候変動に対して科学的な根拠に基づいた行動を取り、地球と子どもたちの未来を保護することが必要だと認識しています。
経済的な観点からも、強く、回復力のある未来の経済を構築するためには、クリーンな未来の力を活用する必要があります。
気候変動への対策
カナダは平均気温が世界平均の2倍の速度で上昇しており、特に北部地域では3倍の速さです。
2021年、カナダはパリ協定の下で気候変動に対する野心を高め、2030年までに2005年レベルから40〜45%の排出量削減を目指すと発表しました。
この目標達成には、全経済規模での排出量削減が必要です。
具体的な目標
この目標達成に向けた取り組みは、建築物や車両、産業、農業など、各セクターごとに行われています。
また、これには新たな投資やクリーンエネルギーの推進、労働者向けの新しい仕事創出などが含まれます。
カナダ政府は全国の市民や経済セクターと協力して、気候目標の達成と新たな経済機会の獲得に取り組んでいます。
カナダは2030年までにカーボンニュートラルを目指し、住宅やビルのエネルギー効率の向上、コミュニティへの気候行動の支援、電気自動車への移行支援、再生可能エネルギーへの転換など、幅広い施策を展開しています。
これらの取り組みは、カナダがクリーンな未来への移行を加速し、化石燃料の価格変動から国民を守るためのものです。
参考情報元:Government of Canada
日本はカーボンニュートラルの実現は可能なのか?
実現可能な理由
再生可能エネルギーの拡大
日本は太陽光や風力などの再生可能エネルギーの導入を拡大しています。
政府は、2030年までに再生可能エネルギーの電力源比率を22%から24%に引き上げる目標を掲げており、この取り組みはカーボンニュートラル実現への重要なステップです。
エネルギー効率の向上
日本はエネルギー効率の高い技術開発に長けており、省エネルギー技術の更なる進歩が予想されます。
これにより、産業や家庭でのエネルギー消費量を減らし、温室効果ガス排出量の削減に貢献できるでしょう。
政策と規制の強化
日本政府は気候変動対策に関する政策や規制を強化しています。
カーボンプライシングの導入や環境基準の厳格化などが進められれば、さらなる排出削減が期待できます。
実現が難しい理由
現実的な目標設定の困難さ
2030年までの短期間での目標達成は、現在のエネルギー構造や経済活動の範囲内では困難かもしれません。
特に、化石燃料に依存するエネルギー供給の転換には時間が必要です。
技術的・経済的ハードル
カーボンニュートラルを実現するための技術やインフラの導入には莫大なコストが伴います。経済的な負担と技術的な課題が、目標達成の障害となる可能性があります。
国際的な環境の変化
国際的な市場や政治環境の変化は、日本のカーボンニュートラル達成に影響を与える可能性があります。特に、エネルギー資源や技術輸入に依存する日本にとっては、外部要因が大きな障害となることも考えられます。
このように、日本が2030年のカーボンニュートラル目標を実現するためには、多くの挑戦と障害が存在しますが、同時に技術革新や政策の強化などによる可能性もあります。
まとめ
日本の2030年カーボンニュートラル目標は、国際社会での気候変動対策への貢献と、国内の持続可能な社会経済の発展を目指す重要なステップです。
気候変動による自然災害の増加への対応、環境と経済の両立、国民の健康と生活環境の改善を目指し、再生可能エネルギーや省エネルギー技術の推進、国際的な協力強化など、幅広い施策を通じてこの目標達成に向けた取り組みが進められています。
国際社会でのリーダーシップを発揮し、次世代に健全な地球環境を引き継ぐために、日本はこの野心的な計画を着実に進めていく必要があります。