「脱炭素ってカーボンニュートラルと何が違うの?」「地球温暖化対策の言葉が多すぎて、どれがどう重要なのかさっぱり…」そう思う方もいるのではないでしょうか。
実は、脱炭素とカーボンニュートラルは、地球温暖化対策において異なるアプローチを指しますが、どちらも私たちの未来にとって非常に重要です。
この記事では、脱炭素とカーボンニュートラルの定義、それぞれの違い、そしてこれらのコンセプトが私たちの生活やビジネスにどのように影響を与えるかについて詳しく解説していきます。
脱炭素とは
「脱炭素」という用語は、具体的な定義が確立されているわけではありませんが、一般には地球温暖化の主要因である二酸化炭素の排出をゼロにする目標を指すと解釈されています。
これは、地球の気候バランスを保ち、温暖化の進行を食い止めるための重要なステップとされています。
脱炭素社会とは何か
脱炭素社会とは、二酸化炭素の排出を完全に抑制した状態のことを指し、地球の気候変動問題に対する根本的な解決策として注目されています。
この社会を実現することで、地球温暖化の進行を遅らせることが可能になります。
1960年代から環境汚染が顕著になり始め、1972年には環境問題をテーマにした初の国際会議が開催されました。
それ以降、1997年の京都議定書やパリ協定など、世界各国が脱炭素社会の実現に向けて協議を重ね、具体的な行動計画を策定してきました。
これらの国際的な動きは、地球環境の保全に向けた重要なマイルストーンとなっています。
カーボンニュートラルとは
気候変動の影響が世界的に深刻化する中、多くの国々が環境対策に力を入れています。
日本においても、かつての菅内閣は2020年10月に、2050年までに温室効果ガスを実質ゼロにする目標を掲げました。
この大胆な目標は、日本が環境問題に積極的に取り組む姿勢を国際社会に示す「脱炭素宣言」として知られています。
カーボンニュートラルについてはこちらで詳しく解説しています。
カーボンニュートラルとは?今企業が取り組むメリットやデメリット
脱炭素とカーボンニュートラルの違いは?
上述のように、脱炭素社会の目標とその意義脱炭素という概念は、地球温暖化の主要な原因である二酸化炭素の排出を事実上ゼロにすることを目指しています。
この取り組みにより、地球温暖化の進行を抑制し、環境の持続可能性を高めることが期待されています。
カーボンニュートラルの目的
一方、カーボンニュートラルは、二酸化炭素に限らずメタンやフロンガス、一酸化二窒素などの温室効果ガス全体を対象にしています。
ここでの目的は、これらのガスの排出量が自然界の吸収能力を超えないように管理することです。
脱炭素実現に向けた具体的な行動
脱炭素を実現するためには、企業や個人が日常生活でのエネルギー消費を見直し、無駄な電力使用を削減することが求められます。
例えば、待機電力の削減や公共交通の利用促進がその一例です。
カーボンニュートラルの実現には、排出量を減らすだけでなく、森林などの自然環境を通じた二酸化炭素の吸収促進が不可欠です。
これには、森林管理や植林などの取り組みが含まれます。
脱炭素には厳密な定義が存在しないため、しばしばカーボンニュートラルと同義で使われることがあります。
しかし、脱炭素は特に二酸化炭素の排出削減に重点を置いた取り組みとして理解されています。
対照的に、カーボンニュートラルは二酸化炭素だけでなく、メタンやフロンガスなどの温室効果ガス全体を考慮に入れたアプローチを指します。
この戦略では、排出量と自然界の吸収量とのバランスを取り、“実質ゼロ”を目標としています。
脱炭素と関連のある〇〇とは?
脱炭素と低炭素の違い
低炭素社会とは
低炭素社会は、温室効果ガス、特に二酸化炭素の排出を大幅に削減することを目指していますが、完全には排出をゼロにすることは目標としていません。
低炭素社会では、省エネルギー技術の導入、再生可能エネルギーの利用拡大、高効率の火力発電技術などを通じて、経済活動を継続しながら排出量を減らすことを目指します。
これは、特に途上国が経済成長を続けることができるように、現実的な過渡期の対策として重要視されています。
脱炭素社会とは
脱炭素社会は、低炭素社会よりもさらに進んだ概念で、二酸化炭素を含むすべての温室効果ガスの排出を実質的にゼロにすることを目指しています。
これは、化石燃料の使用を極限まで減らし、完全に再生可能エネルギーに依存する社会を目指すものです。
脱炭素社会への移行は、しばしば「破壊的革新」と表現され、従来のエネルギーシステムを根本から変えることを意味します。
低炭素から脱炭素への動き
パリ協定の合意以降、国際社会はより積極的な気候変動対策を求めており、その結果、低炭素社会から脱炭素社会への移行が議論されるようになりました。
この流れは、特に石炭火力発電などの高排出エネルギー源に対する投資を減らす動きとして現れています。
日本のように高効率の火力発電技術を持つ国にとっては、この急激な変化が挑戦であると同時に、新たな技術開発における商機ともなり得ます。
結論
低炭素社会は、温室効果ガスの排出を減らしながら経済成長を続けることを目指す一方で、脱炭素社会はより厳格に排出量をゼロに近づけることを目指します。
この違いは、気候変動対策の目標と戦略において重要な意味を持ち、各国の政策や産業の方向性に大きな影響を与えています。
参考文献:www.jcassoc.or.jp/
脱炭素とGXの違い
初めにお伝えしたように、脱炭素とカーボンニュートラルは混同されがちであり、脱炭素は明確な定義をされないことがあります。
そのため、GXの違いをカーボンユートラルとの違いとしてもお伝えいたします。
GXとは
「Green Transformation」の略で、直訳すると「緑の変革」という意味になります。
これは、経済活動や社会システムを、環境に配慮した持続可能なものに変えていく過程やその取り組みを指します。
具体的には、化石燃料に依存しないクリーンエネルギーへの移行、省エネルギー技術の開発、循環型社会の構築など、地球温暖化の防止と自然環境の保護を目指した活動全般を含みます。
GXは、単に環境問題に取り組むだけでなく、新しい技術やビジネスモデルを生み出し、経済成長を促進するという側面も持っています。
つまり、環境保全と経済発展が共存する社会を目指す動きと言えるでしょう。
これは、持続可能な開発目標(SDGs)とも密接に関連しており、地球環境を守りながら人類の豊かな未来を築くための重要な概念です。
グリーントランスフォーメーションとカーボンニュートラルの相違点
カーボンニュートラルは温室効果ガスの実質ゼロを目指す一方で、GXはそれを超えて社会全体の持続可能な成長を図る概念です。
GXと経済成長
GXは、環境問題の解決だけでなく、社会システムの変革や経済成長をもたらす全体的な戦略として位置づけられています。
SDGsとGX
GXは、エネルギーの持続可能性や気候変動対策だけでなく、雇用創出や経済成長にも寄与し、SDGsの目標達成に貢献する重要な役割を担います。
GXの役割
GXは、環境だけでなく、都市開発、雇用、教育、福祉など、多岐にわたる課題の解決に向けた横断的なアプローチを提供します。
このように、GXとカーボンニュートラルは、日本の未来を形作るための重要な概念であり、それぞれが持続可能な社会への道を切り開くための戦略的な取り組みとなっています。
脱炭素と類似した言葉
ゼロカーボン
ゼロカーボン社会とは、人間活動による温室効果ガスの排出と自然界の吸収とが均衡を成す状態を指し、持続可能な地球環境を維持するための重要な目標です。
ゼロカーボンとカーボンニュートラルは同じ?
ゼロカーボンは、二酸化炭素を含む温室効果ガスの排出量を自然吸収力で相殺し、実質的に排出量をゼロにする概念です。
この用語はカーボンニュートラルと交換可能に使用され、地球温暖化対策の基本方針として広く認識されています。
ゼロカーボン実現への具体例
企業や家庭が排出する温室効果ガスの量を、植林や森林管理を通じて自然界が吸収できる量とバランスさせ、排出量ネットゼロを目指す取り組みがゼロカーボンです。
国際的にはネットゼロという表現も一般的で、地球環境の保全に向けたグローバルな動きとして認識されています。
カーボンオフセット
カーボンオフセットは、日々の生活やビジネス活動で避けられない温室効果ガスの排出を、他の場所での削減努力によって相殺する環境保全手法です。
このプロセスでは、まず排出量の削済を目指し、それでも残る排出分については、同等の削減効果があるプロジェクトへの投資を通じてバランスを取ります。
日本におけるカーボンオフセットの取り組み
日本では、カーボンオフセットの信頼性を保証するために、国内での排出削減や森林整備によって生じた削減量・吸収量を証明する「J-VER制度」が2008年に設立されました。
さらに、この制度は2013年に「J-クレジット制度」として発展的に統合され、より広範な活動が認証されるようになりました。
カーボンオフセットとカーボンニュートラルの違い
カーボンオフセットは、カーボンニュートラルと似た概念ですが、そのアプローチには微妙な違いがあります。
カーボンニュートラルは、自らの排出した二酸化炭素を自らの投資による吸収で相殺することを目指します。
一方で、カーボンオフセットは、削減できなかった排出量を自分の投資とは別の手段、例えば他の企業やプロジェクトの削減活動を通じて相殺することを指します。
カーボンネガティブ/気候ポジティブ
カーボンネガティブの定義
カーボンネガティブは、大気中に放出される二酸化炭素(CO2)の量を、自然や技術的手段によって吸収される量が上回る状態を指します。
これは、単に排出量と吸収量が均衡するカーボンニュートラルを超え、より積極的な地球環境への貢献を意味します。
カーボンネガティブの目標と日本の現状
日本は「2050年カーボンニュートラル宣言」を行い、温室効果ガスの削減に向けた施策を推進しています。
2019年度の温室効果ガス排出量は、2013年度比で14.0%の削減を達成していますが、より大きな目標達成のためには、カーボンネガティブへの転換が求められています。
カーボンネガティブ実現のための技術革新
カーボンニュートラルの目標を達成し、さらに進んでカーボンネガティブを目指すためには、ネガティブエミッション技術(NETs)が鍵を握ります。
これらの技術は、大気中のCO2を効率的に回収し、長期間にわたって貯留または固定化することで、CO2のネット減少に貢献します。
カーボンネガティブと気候ポジティブの関連性
カーボンネガティブは、気候ポジティブと同義で使用されることがあります。
これは、温室効果ガスの排出量を削減し、気候変動の緩和に積極的に貢献する姿勢を示す言葉です。気候ニュートラルとは異なり、単にバランスを保つのではなく、環境にプラスの影響を与えることを目指します。
脱炭素ドミノ
脱炭素ドミノの概念
環境省が提唱する「脱炭素ドミノ」とは、再生可能エネルギーの導入拡大などを通じて、一地域から始まった脱炭素化の取り組みが、他の地域へと波及し、最終的に国全体へと広がる現象を指します。
この動きは、100箇所以上の地域での脱炭素化の先導を目指し、それぞれの地域が特有の対策を講じることで、全国的な環境改善へと繋がることを目的としています。
ライフサイクルアセスメント(LCA)
ライフサイクルアセスメント(LCA)は、製品やサービスが提供する価値の全生涯にわたる環境影響を、包括的かつ定量的に分析する方法です。
このアプローチでは、原材料の採取から製品の製造、流通、使用、そして最終的な廃棄やリサイクルに至るまでの全過程を評価の対象とします。
LCAの評価
LCAは、製品やサービスが環境に与える影響を、その全ライフサイクルにわたって評価します。
これには、エネルギー消費やCO2排出量のみならず、製造から廃棄に至るまでのあらゆる段階での環境負荷が含まれます。
これまでの評価が生産工程に限定されがちだったのに対し、LCAではより広範な視野で環境負荷を捉えます。
LCAの歴史
LCAの概念は、1969年にコカコーラ社が飲料容器の環境影響を評価するために行った研究に遡ります。
以来、環境への意識の高まりとともに、LCAの需要が増し、その評価方法も進化してきました。
LCAによるCO2排出量の比較分析
LCAを用いることで、同じ機能を持つ異なる製品間のCO2排出量をライフサイクル全体を通じて比較することができます。
これにより、製品の環境負荷を削減するための改善点を明確にします。
参考文献:環境展望台
Scope1〜3
Scope1(直接排出)
スコープ1は企業が直接的にコントロールする範囲内で発生する温室効果ガスの排出を指します。これには、企業の施設での燃料の燃焼や、企業が所有する車両からの排出などが含まれます。
Scope2(間接排出:エネルギー起源)
スコープ2は、企業が購入または消費する電力、熱、蒸気などのエネルギーに起因する間接的な排出を指します。これは、エネルギーの生産過程で発生する排出量を、そのエネルギーを使用する企業が責任を負うという考え方に基づいています。
Scope3(その他の間接排出)
スコープ3は、企業の活動によって間接的に発生する排出で、スコープ1やスコープ2には含まれないものです。これには、原材料の調達、製品の配送、従業員の通勤、製品の使用から廃棄に至るまでのライフサイクル全体で発生する排出が含まれます。
カーボンフリー
カーボンフリーという用語は、二酸化炭素(CO2)やその他の温室効果ガスを一切排出しない状態を指します。
これは、再生可能なエネルギー源を活用することにより、化石燃料の使用を避けることを意味しています。パリ協定の下で設定された国際的な目標に沿って、このアプローチは世界中で追求されており、持続可能な未来への重要なステップと見なされています。
カーボンフリーとカーボンニュートラルの違い
カーボンフリーは、温室効果ガスの排出を一切行わないことを目指すのに対し、カーボンニュートラルは排出されたガスを環境による吸収やオフセットによってネットゼロにする概念です。
カーボンニュートラルは、排出を完全には避けられない現実を受け入れつつ、総合的なバランスを取ることを目的としています。
再生可能エネルギー:カーボンフリーへの鍵
カーボンフリーを実現するためには、太陽光、風力、水力、地熱などの再生可能エネルギー源への依存が不可欠です。
これらのエネルギー源は、発電過程でCO2を排出しないため、化石燃料に代わる持続可能な選択肢となります。
太陽光エネルギーの利点と課題
太陽光エネルギーは、太陽の光を直接電気に変換し、CO2排出を伴わないため、カーボンフリーの実現において中心的な役割を果たします。
ただし、太陽光パネルの設置には環境への影響やコストの問題が存在します。
風力エネルギーの可能性
風力エネルギーは、風の動力を利用して電力を生成し、CO2排出をゼロに保つことができます。
しかし、設置場所の選定や騒音などの環境への影響が課題となります。
水力発電の環境への影響
水力発電は、水の流れを利用してエネルギーを生み出す方法ですが、ダム建設による自然環境への影響が懸念されています。
地熱発電の利用と限界
地熱発電は、地球内部の熱を利用して発電する方法で、CO2排出がない一方で、地熱資源の位置や開発コストが課題となります。
カーボンフリーへのグローバルな取り組み
世界各国は、カーボンフリーを目指して様々な政策を実施しています。
パリ協定は、これらの取り組みを統一する国際的な枠組みを提供しており、各国は自国の目標に向けて努力を続けています。
日本のカーボンフリーへの挑戦
日本政府は、2030年までに温室効果ガスを大幅に削減する目標を掲げており、カーボンフリー化を進める一方で、カーボンニュートラルを目指しています。
これは、化石燃料に依存する現状を考慮に入れた現実的なアプローチです。
カーボンフリーの未来と課題
カーボンフリーの実現には多くの課題があります。
自然環境への影響、エネルギー供給の安定性、開発コストなど、多方面での配慮が必要です。
これらの課題に対処しつつ、持続可能なエネルギー源への移行を進めることが、カーボンフリーな社会への道を開く鍵となります。