日本の石炭火力発電が多い理由とは?

日本の石炭火力発電が多い理由とは?

日本の石炭の使用量

 

日本で発電などに使用される石炭の量は増加傾向にあり、国際エネルギー機関の統計によると、2021年の日本の石炭消費量は1億7,400万トンとなっています。

 

石炭は、日本では主に電気業と鉄鋼業で使用されており、石炭の消費量を減らすためには石炭火力発電所のあり方を考えていく必要があります。

 

日本の火力発電の種類

 

火力発電とは、石炭やLNG(液化天然ガス)などの燃料を燃やして得られた熱エネルギーを、発電設備によって電気エネルギーに変換する発電方法のことです。日本では以下のような発電方法が使われています。

 

  • 汽力発電

汽力発電とは、蒸気の膨張力を利用した発電方式です。石炭やLNG、重油などを燃やした熱で高温・高圧の蒸気をつくります。

この蒸気を使って蒸気タービンの羽根車を回し、タービンにつないだ発電機を動かし発電します。

汽力発電では、比較的低温域(600℃以下)での熱エネルギーの利用となります。

 

  • コンバインド・サイクル発電

コンバインドサイクル発電は、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた発電方式です。発電効率が良いため、二酸化炭素の排出量を抑えることが期待できます。

 

発電の仕組みとしては、圧縮した空気の中で燃料を燃やして燃焼ガスを発生させ、その膨張力を利用して発電機を回すガスタービン発電と、その排ガスの余熱を回収して蒸気タービンを回す汽力発電を組み合わせるというもので、これにより高い熱効率を得ることができます。

 

また、小型のガスタービンと蒸気タービンによって構成されているので、運転・停止が短時間で容易にでき、需要の変化に即応した運転が可能となっています。

 

日本は脱石炭はできるのか?

 

今すぐに石炭火力発電と石炭を使用する産業をすべて止めれば、脱石炭を実現できます。もちろんこんなことは不可能です。

 

現時点で石炭は主要なエネルギーであるため、脱石炭のためには代替エネルギーを大量に導入する必要があります。

 

現在の政府の方針では、2050年のカーボンニュートラルに向けて、火力発電の比率をできる限り引き下げていくことを目指している一方、電力不足による停電や社会の混乱が起きないよう発電効率の高い石炭火力発電所は維持する方向です。

 

こういった点からも、石炭の消費量をゼロにするといった意味での脱石炭は現実的ではありませんが、現状よりも削減していく方向にあるといえます。

 

石炭に代わる再生可能エネルギーはある?

 

脱石炭に欠かせないのが再生可能エネルギーです。近年耳にすることが多いこの言葉ですが、再生可能エネルギー源の定義は法令(いわゆる「エネルギー供給構造高度化法」とその政令)で決められており、具体的には太陽光や風力などが含まれています。

 

これらの再生可能エネルギーが石炭に代わるポテンシャルがあるのか、以下で検証したいと思います。

 

①太陽光エネルギー

再生可能エネルギーの代表格となるのが、太陽光エネルギーです。資源エネルギー庁の発表によると、2021年度の太陽光による発電量は861億kWhで、全体の8.3%でした。

 

一方、石炭による発電量は3,205億kWhで、太陽光発電が石炭に代わるためには、単純計算で約4倍の発電量が必要になります。

 

太陽光発電が天気や時間(昼か夜かなど)に影響されることを考えるとさらに多くの発電量と蓄電池が必要になるでしょう。

 

このような点から、太陽光エネルギーが石炭に取って代わるのは難しいというのが現状です。

 

②風力

再生可能エネルギーの中で太陽光に匹敵する知名度を持つのが風力です。その歴史は比較的古く、1974年の政府計画が導入の発端となっています。

 

しかしながら、発電量の面では依然として脇役的存在で、2021年度は94億kWhにとどまっています。太陽光発電の約10分の1の発電量です。

 

風力も、石炭に代わるエネルギーとなるのは難しいでしょう。

 

③水力

水力も古くから使われてきた再生可能エネルギーです。小説「黒部の太陽」でも有名な黒部ダムを始め、全国各地に水力発電所が建設されています。

 

最大出力では火力発電所に匹敵する水力発電所もありますが、降水量によって出力が左右されるのがデメリットです。

 

また、水力発電のためのダムを開発するためには多額の費用と広大な土地が必要となるため、すぐに水力発電所を増やすというのは容易ではありません。

 

まとめ

 

ここまで、日本の石炭火力発電について考えてきました。石炭火力発電が多い理由としては、再生可能エネルギーが主力電源になり得ないことが挙げられます。

 

一方で、日本は様々な環境対策を行っており、二酸化炭素排出量は全世界の約1割です。また、環境負荷の高い石炭火力発電所は廃止していく方向にあることから、電気料金や産業への悪影響を防ぐためにも、過度に脱石炭を推し進める必要はないでしょう。

 

参考資料

国際エネルギー機関(https://iea.blob.core.windows.net/assets/91982b4e-26dc-41d5-88b1-4c47ea436882/Coal2022.pdf)[参照2023-2-23]

 

経済産業省「火力政策をめぐる議論の動向について」
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/pdf/042_04_00.pdf)[参照2023-2-23]

 

資源エネルギー庁『集計結果又は推計結果(総合エネルギー統計)「時系列表」』
https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/total_energy/results.html#headline1
[参照2023-2-23]

 

飯野光政, 牛山泉「日本における大規模風力発電導入の歴史」『The Journal of Education for History of Technology』VoL2, No.2, pp.23-32

環境省「世界のエネルギー起源CO2排出量」
https://www.env.go.jp/content/000098246.pdf)[参照2023-2-23]

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