外国人労働者をどう受け入れればいいの?」「社会にどんな影響があるの?」そう思う方もいるのではないでしょうか。
外国人労働者の増加は、労働市場に多様性をもたらすとともに、一部で社会問題も引き起こす可能性があります。
この記事では、外国人労働者が増えることによる社会的、経済的影響と、効果的な受け入れ策についてわかりやすく解説します。
外国人労働者とは?
日本で働く外国人労働者の増加は、多くの社会的、経済的影響をもたらしています。
しかし、実際に「外国人労働者」とはどのように定義されているのでしょうか?
厚生労働省による公式な定義から、外国人労働者の種類が以下のように分類されます。
外国人労働者の定義
第三 外国人労働者の定義
この指針において「外国人」とは、日本国籍を有しない者をいい、特別永住者並びに在留資格が「外交」及び「公用」の者を除くものとする。また、「外国人労働者」とは、外国人の労働者をいうものとする。
なお、「外国人労働者」には、技能実習制度において「特定活動」の在留資格をもって雇用関係の下でより実践的な技術、技能等の修得のための活動を行う者(以下「技能実習生」という。)も含まれるものである。
出典:厚生労働省HP
日本では、外国人労働者に関する定義が上記のように設けられています。
具体的には、「外国人」とは日本国籍を持たない人々を指し、外交や公用の在留資格を持つ人を除外しています。
さらに、「外国人労働者」とは、実際に労働を行う外国人のことを言います。このカテゴリーには、技能実習生も含まれることが明記されており、これらの人々は「特定活動」の在留資格の下で働いているとされます。
この定義により、事業主は外国人労働者の雇用管理に当たって、どのような点に注意すべきかの指針を持つことができます。
外国人労働者のカテゴリー
「専門的・技術的分野」に該当する主な在留資格 | |
在留資格 | 具体例 |
技術 | 機械工学等の技術者、システムエンジニア等のエンジニア |
人文知識 | 企画、営業、経理などの事務職 |
・国際業務 | 英会話学校などの語学教師、通訳・翻訳、デザイナー |
企業内転勤 | 外国の事業所からの転勤者で上記2つの在留資格に同じ |
技能 | 外国料理人、外国建築家、宝石加工、パイロット、スポーツ指導者 |
教授 | 大学教授 |
投資・経営 | 外資系企業の経営者・管理者 |
法律・会計 業務 |
弁護士、会計士 |
医療 | 医師、歯科医師、看護師、薬剤師、診療放射線技師 |
研究 | 政府関係機関、企業等の研究者 |
教育 | 高等学校、中学校等の語学教師 |
出典:厚生労働省カテゴリー
外国人労働者は、一般にその就労の形態によって分類されます。具体的には、合法的に就労が認められている者と、不法に労働する者が存在します。
合法就労者は適切な在留資格を持ち、日本国内で法律に則って労働をしています。
一方で、不法就労者は適切な在留資格がなく、雇用する側も法的な罰則のリスクを持つことになります。
さらに、合法就労者は以下のようにさまざまなカテゴリに分けられます:
- 身分に基づく在留資格者
永住者や日本人の配偶者、日系人など
- 専門的・技術的職種
大学教授、医師、エンジニアなど高度な専門スキルを要する職業
- 技能実習生
農業や製造業など、具体的な技能を習得するために日本で研修を受ける途上国出身者
- 資格外活動を行う者
主に留学生など、学業と並行して限られた範囲でのアルバイトを行う人々
以上の分類により、外国人労働者の実態は多岐にわたり、その管理や支援には各種の対応が求められることが明らかになります。このような情報を踏まえ、適切な外国人労働政策の推進が期待されています。
外国人労働者の受け入れの現状
2023年のデータによると、日本全国で約204万人の外国人労働者が雇用されており、雇用事業所数は約31万カ所に上ります。これは過去最高記録であり、外国人労働者の存在感が年々増していることが伺えます。
また、厚生労働省の新しい政策として、技能実習制度の見直しや育成就労制度の導入が決定されており、これにより特定技能制度への移行がスムーズに進むことが期待されています。
企業の対応と課題
帝国データバンクの調査によると、外国人労働者を現在雇用している企業は全体の約23.7%にのみ及びますが、今後採用を拡大する意向を持つ企業も16.7%存在しています。
特にサービス業や個人向け業界で採用意欲が高いことが明らかになっています。
しかし、多くの企業が外国人労働者の採用に際してスキルや言語能力、文化的な違いなど多数の課題に直面しています。
特に言語の壁や文化的な違いは、企業と労働者双方にとって大きな課題となっており、これを解決するための継続的な教育と支援が求められています。
政策とその影響
政府は、外国人労働者の増加に対応するために様々な制度改革を行っています。
新設された育成就労制度は、技能実習生が他企業に転籍することを可能にし、より柔軟な労働市場の形成を目指しています。
しかし、これによる具体的な変化や、新しい課題にどのように企業が対応していくのかが今後の大きな焦点となります。
さらに、外国人労働者の法的な保護や社会的なサポートの充実も、彼らが安心して働ける環境を整えるためには不可欠です。
情報参考元:TDB Business View
外国人労働者が増えることで起こる影響
外国人労働者の増加に伴うメリットとデメリットは、多角的な影響を及ぼしています。以下に、どのような影響が起こるのかについて説明します。
メリット
- 労働力不足の緩和:
- 人口減少が進む日本において、特に労働力が不足している地域や産業で、外国人労働者の受け入れは労働市場の圧力を軽減します。
これにより、サービスの継続や生産性の保持が可能となります。
- 人口減少が進む日本において、特に労働力が不足している地域や産業で、外国人労働者の受け入れは労働市場の圧力を軽減します。
- 地域経済の活性化:
- 人口が減少する地域において、外国人労働者は必要な労働力を供給し、地域経済の衰退を阻止することが可能です。彼らは消費者としても機能し、地域の商業活動を支えます。
- 国際的な視点の導入:
- 多様な文化背景を持つ労働者がもたらす新しい視点やアイデアは、国内企業に新たな刺激を提供し、国際競争力の向上に寄与します。
デメリット
- 賃金の低下
外国人労働者の増加は、一部の産業において賃金の抑制要因となりうる。これは、国内労働者の賃金上昇が制限されることにつながり、生活水準に影響を与えかねません。
- 社会的な摩擦
文化や生活習慣の違いから、地域社会内でのトラブルが生じる可能性があります。これには言語の壁や生活スタイルの差異が関係しており、社会的な緊張を高める原因となることがあります。
- 生産性の停滞
安価な労働力としての外国人労働者の利用が続く場合、技術革新の遅れや生産性の向上が遅れる可能性があります。これは長期的には国内産業の競争力低下を招く恐れがあります
確かに外国人労働者の受け入れは、即座に労働力不足を解消する有効な手段ですが、その影響は一時的なものではなく、社会全体に多大な影響を与えることが考えられます。
したがって、これらの労働者を受け入れる際には、ただ人手を確保するだけでなく、彼らが社会にスムーズに溶け込めるような支援策を整備することが重要です。
また、文化的な理解を深め、両者の良好な関係を築くための努力も必要になります。
外国人労働者の受け入れ問題をわかりやすく解説
外国人労働者の受け入れは、現代の日本で労働力不足を解消する重要な策の一つとされています。
しかし、外国人労働者の受け入れには多くの問題が伴います。
不適切な待遇やコミュニケーションの壁、労働環境の問題など、さまざまな問題が外国人労働者自身だけでなく、彼らを雇用する企業にとっても大きな課題となっています。
技能実習生の賃金不払い問題
技能実習生における賃金問題は深刻で、多くの失踪原因がこれに関連しています。
出入国在留管理庁によると、賃金不払いや過剰な控除、最低賃金の違反などが原因で約44%の技能実習生が失踪すると報告されています。
事例
〔事案1(最低賃金違反,割増賃金不払等の疑い)〕
平成29年分の聴取票に係る失踪技能実習生Aが,縫製業の技能実習を行っていたところ,失踪に先立つ約7か月の間,定額の基本給として月額6万円しか支給されず,さらに36協定に違反する月平均約60時間の残業につき時給700円しか支給されていなかった事案。
当該実習実施機関は,本調査で本件が発覚するまで,前記A以外の複数の技能実習生に対しても同様の取扱いをしていたほか,
– 12 –
契約どおり適正な賃金の支払等を行っていた旨の虚偽の賃金台帳等を作成して監理団体等に提出し,虚偽報告を行っていた。
本件については,上記①~⑤の不正行為等の疑いが認められたことから,地方入国管理局において,最低賃金法違反等の事実で労働基準監督機関に通報したほか,偽変造文書等行使の事実について監理団体の関与がうかがわれることから,調査を続行している。
出典:技能実習制度の運用に関するプロジェクトチームの調査・検討結果 概要
このように、技能実習生として来日した外国人労働者に対しての対応に問題がある、企業は少なくないようです。
7ヶ月間の間基本給が6万円というのはどうなのでしょうか?
仮に、月22日勤務×1日8時間=176時間
60000÷176= 341円
になります。
仮に寮や食事が準備されていてもかなり待遇が悪い状況がわかります。
(そもそも労基に違反している)
このような扱いをしていれば問題が起きることは当然ではないでしょうか。
技能実習生は他の職に就くことが基本的に許されず、同じ企業で3年から5年の間働かなければならないため、不満が蓄積しやすいです。
また、残業代が支払われないことも多く、実質的に最低賃金以下で働くことが強いられる場合があります。
外国人労働者の労働環境問題
特に人手不足が著しい産業では、外国人労働者は長時間労働や重労働に耐えなければならない状況が多く、これが高い離職率や労災事故に繋がっています。
安全対策が不十分な職場も少なくないため、厚生労働省も注意を呼びかけています。
以下に令和2年度に起きた外国人労働者の労働災害のデータがあります。
・事故の件数の約半分が製造業
・次に多いのが建設業
上記の職場での事故の数が全体の大半を占めています。
コミュニケーションの問題
内閣府の調査によると、外国人労働者が日本人との間で感じるコミュニケーション障害は大きな問題です。
特に日本語能力が低いことや、文化の違いが原因で生じるミスコミュニケーションが多く見られます。
『日本人なら』と感じることがあると、思いますが言語が違うと思考も違います。
特に『察する』という文化は日本にしかないため、外国人労働者の方へは物事をはっきりと伝える必要があります。
外国人労働者の就労制限とその影響
日本での外国人労働者は厳しい就労制限が設けられており、それが生活や仕事選びに大きな制約を与えています。
特定の在留資格でのみ働けるため、多くの外国人が不法就労のリスクを抱えています。
また、企業は外国人労働者を雇用する際、法的な制限を守ることが絶対条件です。不適切な雇用が発覚した場合、重大な法的責任を問われることがあります。外国人労働者の権利保護と合法的な雇用が求められます。
このように、外国人労働者の問題は多岐にわたりますが、適切な管理と支援が行われれば、彼らが抱える問題は大幅に減少するでしょう。外国人労働者と共に成長するためにも、企業や政府の積極的な取り組みが必要です。
外国人労働者の受け入れ問題の解決方法
同一労働同一賃金の実施
外国人労働者への公正な待遇を保証する基本的な方法は、日本人労働者との間で差別を設けないことです。これには給与や残業代の公平な支払いが含まれ、2020年4月から中小企業にも適用された「同一労働同一賃金」制度を遵守することが求められます。この制度は不合理な待遇差を解消し、職場での公平を促進します。
同一労働同一賃金の導入は、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者) と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)との間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。
※パートタイム・有期雇用労働法(2021年4月1日より全面施行)、労働者派遣法(2020年4月1より施行)
出典:厚生労働省HP
雇用条件の透明性向上
外国人労働者の採用にあたっては、求人票や雇用契約を明確にし、入社後のトラブルを避けることが重要です。具体的には、契約条件を明瞭にし、誤解を招くような不明瞭な表現を避けることが推奨されます。
コミュニケーションと職場環境の改善
外国人労働者が職場で生産的であるためには、適切な言語支援が不可欠です。
企業は通訳サービスの提供や、職場の指示を外国人労働者の母語に翻訳することにより、コミュニケーションの障壁を低減させる必要があります。
最近ではDEEP Lの翻訳機能が高いのでおすすめですね。
また、外国人労働者が自身の文化や慣習を尊重され、理解される環境を整えることで、職場での満足度や生産性が向上します。具体的には、多文化に対応した職場イベントの開催や、文化的差異に対する教育プログラムが有効です。
外国人労働者への法律の遵守
企業が外国人労働者を雇用する際は、日本の労働法を遵守し、最低賃金法をはじめとする労働関連の法律を厳格に守る必要があります。
違法な低賃金での雇用や、不当な待遇は、法的なリスクだけでなく、企業の社会的評価をも損なうことになります。
労働契約を明確にすることで、雇用期間の初めから労働者と雇用者の間での認識の齟齬を最小限に抑え、トラブルを予防します。
具体的には、労働条件、給与の詳細、勤務時間、休日の規定など、可能な限り詳細に契約書に記載することが推奨されます。
このようにして、外国人労働者の受け入れに関する問題を適切に管理し、解決策を実行することで、彼らが日本社会で健全に働ける環境を整えることができます。職場の多様性が増すことは、企業にとっての大きな資産となるでしょう。
外国人労働者の受け入れ問題のまとめ
外国人労働者の増加は、日本社会において重要な影響を及ぼしています。これらの労働者が経験する問題は多岐にわたりますが、適切な受け入れ策と社会的サポートを提供することで、これらの課題は大幅に軽減される可能性があります。
社会全体として外国人労働者の存在を積極的に受け入れ、多文化共生の理解を深めることが、日本の持続可能な発展に寄与する鍵となるでしょう。
しかしながら、外国人労働者は日本に永住することは少ないため、根本的な日本の人材不足の課題解決にはなりません。
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