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労働安全衛生法の改正とラベル表示の義務化について:ビルメン編

労働安全衛生法の改正とラベル表示の義務化について:ビルメン編

2024年4月1日に施行された労働安全衛生法の改正は、労働者の安全と健康を守り、リスクの高い化学物質に対する対策の強化のために導入されました。

特に、化学物質管理者の選任の義務化、危険性の高い化学物質のリストへの追加、および労働者教育が重要になります。

 

以下では、この法改正の具体的な内容と、事業主が準備すべきポイントを詳しく解説していきます。

 

労働安全衛生法の改正の背景

近年、化学物質に起因する労働災害が増加している中、適切なリスク情報の提供が不十分であることが問題とされていました。

 

これを受けて、労働安全衛生法は全国的な安全基準を設け、化学物質の取り扱いに関してより厳格な規制を導入することになりました。

 

法改正の主要な点

化学物質管理者の選任義務化

事業主は、化学物質の取り扱いが行われるすべての事業場において、化学物質管理者を選任することが義務付けられました。

 

この管理者は、化学物質の安全な取り扱い、リスクアセスメントの実施、従業員への教育を担うことになります。

 

化学物質管理者

化学物質管理者は、事業場における化学物質の管理に係る技術的事項を管理するものとして位置づけられており、
表示及び通知に関する事項、リスクアセスメントの実施及び記録の保存、ばく露低減対策、労働災害発生時の対応、
労働者の教育等に携わる。化学物質管理者は、リスクアセスメント等が義務付けられる危険性・有害性のある化学物
質(労働安全衛生法第 57 条の 3 でリスクアセスメントの実施が義務付けられている危険性・有害性のある物質)
(以下リスクアセスメント対象物と呼ぶ)を扱うすべての事業場(事業場の規模に拘わらず)で選任されなければなら
ない。ただし一般消費者の生活の用に供される製品のみを扱う事業場は選任の対象外である。

出典:化学物質管理者講習テキスト

 

化学物質管理者は6時間の講習を受けることで専任することが可能です。

国家資格ではなく、厚生労働大臣が示す内容に従った専門的講習を修了することで認められます。

 

ラベル表示およびSDSの義務化

特に危険性の高い化学物質については、GHSに準拠したラベル表示と安全データシートの提供が義務化されました。

 

これにより、労働者が化学物質の危険性を理解し、適切な予防措置を講じることが容易になります。

 

安全データーシートとは?

SDS(安全データーシート)は、化学物質の危険性と安全な取り扱い方法についての詳細な情報です。

一般的なSDSは16のセクションで構成されており。重要なセクションとしては、製品と会社の識別、危険性識別、成分情報、応急処置の手順、消火方法、取り扱いと保管、物理的及び化学的性質、安定性と反応性などがあります。

 

セクション タイトル 内容の説明
1 製品および会社情報 製品名、供給者の連絡先情報、緊急連絡先。
2 危険性識別 製品の危険性、警告ラベルの内容、その他の危険情報。
3 成分/化学組成情報 化学品の成分、含有割合、化学的特徴。
4 応急処置の手順 人体への曝露(吸入、皮膚・眼接触、摂取)の場合の応急処置。
5 消火手段 火災発生時の適切な消火剤と消火方法。
6 事故放出対策 大量放出事故の際の環境への影響と清掃方法。
7 取扱いおよび保管 安全な取扱い方法と保管条件。
8 ばく露防止および個人保護 推奨される個人保護具と環境ばく露防止のガイドライン。
9 物理的および化学的性質 物質の外見、臭い、沸点、融点、引火点、蒸発率、密度などの基本的な物理化学的性質。
10 安定性および反応性 化学的安定性と反応性、避けるべき条件、互換性のない物質、危険な分解産物。
11 毒性情報 毒性学的影響、長期的および短期的影響、実験データおよび推定データ。
12 生態学的情報 水生環境への影響、持続性と分解性、生物集積性、土壌移動性などの環境影響情報。
13 廃棄に関する考慮事項 製品の安全な廃棄方法と包装材の処理方法。
14 輸送情報 国内外の輸送規制情報、運送時の分類、危険物の識別番号など。
15 規制情報 製品が対象となる国内外の主要な規制情報、安全、健康、環境規制情報。
16 その他の情報 SDSの改訂情報、執筆や改訂日、その他の重要な情報。

 

ビルメンテナンス会社に重要なラベル表示とは?

2024年4月1日から大きく変化した内容としては、小分けした化学物質に対してもラベル表示を行わなければならないという点です。

 

 

ラベル表示に必要な情報

出典:株式会社サンプラテック

 

①製品名

②注意喚起

③絵表示

④危険有害性情報

⑤注意書き

⑥供給者名

がラベルの表示に必要になります。

 

表示に必要な成分例

ラベル表示が義務付けられている成分例として以下のものが該当します。

 

番号 化学物質名 特性
1 水酸化ナトリウム(苛性ソーダ) 強アルカリ性で、皮膚や目への強い腐食性があります。
2 水酸化カリウム 強アルカリ性を持ち、強い腐食性があるため、皮膚や目に対する危険があります。
3 硫酸 高濃度では非常に強い酸性を示し、金属の腐食や有機物質の分解を引き起こすため危険です。
4 塩酸 強酸性で、腐食性があり、特に呼吸器への影響が懸念されます。
5 アンモニア 高濃度で吸入すると呼吸器にダメージを与える可能性があります。
6 塩化ベンザルコニウム 強い抗菌作用を持ちますが、皮膚や粘膜への刺激性があります。
7 過酸化水素 特に高濃度のものは強い酸化作用があり、腐食性があるため危険です。
8 エチレングリコールモノブチルエーテル 溶剤としての効果は高いですが、皮膚や目への刺激性、毒性が懸念されます。
9 フェノール 毒性が高く、皮膚から吸収されると全身に影響を及ぼす可能性があります。
10 ナフサ(石油エーテル) 引火性が高く、神経系への影響も懸念されます。

 

水酸化ナトリウムが含まれている製品一例

水酸化ナトリウムとは?

水酸化ナトリウムは、非常に強いアルカリ性を持つ化学物質で、一般的には「苛性ソーダ」として知られています。

 

これは、水、アルコール、または酸と反応して熱を発生するため、非常に腐食性があります。

皮膚や目に接触すると重大なやけどを引き起こす可能性がありますので、取り扱いには細心の注意が必要です。

 

水酸化ナトリウムが含まれるものの一例

  1. 清掃剤 – 配管や排水の詰まりを解消する強力な排水管クリーナーに使用されます。
  2. 製紙業 – 紙の製造過程で木材をパルプに変える際に使われます。
  3. 石鹸および洗剤 – 脂肪酸と反応させて石鹸を製造する過程で使用されます。
  4. 食品産業 – オリーブの処理やプレッツェル製造時のアルカリ浴として使用されることがあります。

 

※ビルメンで使用するケミカルとしては強力アルカリ洗剤に多くに含まれています。

 

花王社ハイター

出典:モノタロウ

 

リンレイ社

出典:モノタロウ

 

 

ユシロ化学工業社

出典:モノタロウ

 

シーバイエス社

出典:モノタロウ

 

過酸化水素が含まれている製品一例

過酸化水素とは?

過酸化水素

過酸化水素は、その名の通り水素と酸素の化合物で、無色透明の液体です。

 

一般的には低濃度で薬局などで売られているものは、消毒剤として利用されます。過酸化水素は酸化力が非常に強く、細菌を殺菌する能力を持つため、傷口の消毒に使われることが多いです。

 

しかし、高濃度では非常に危険で、腐食性があるため取り扱いには注意が必要です。

 

過酸化水素が含まれるもの:

  1. 消毒剤 – 医療分野で小さな傷口の消毒に使われることが多いです。
  2. 美容製品 – 特にヘアカラー剤や漂白剤に含まれ、髪の色を明るくするために使用されます。
  3. 洗浄剤 – 特に歯科医療で使用される歯の漂白剤に含まれています。
  4. 庭園用品 – 病気や害虫から植物を保護するための殺菌剤としても使用されます。

 

※ビルメンで扱うケミカルとしてはカーペットの染み抜き剤に多く使われています。

 

シーバイエス社

出典:モノタロウ

 

花王社

出典:モノタロウ

 

レボテック社

出典:ポリッシャーJP

 

バイロックス社

出典:ポリッシャーJP

 

まとめ

今回は、労働安全衛生法の改正とラベル表示の義務化について紹介いたしました。

紹介した成分には「アンモニア」「過酸化水素」なども含まれています。

 

これらの成分はどこにでも含まれているものが多いため、ビルメンテナンス業務の中で小分けにして使用することも多いと思います。

 

しかし、義務付けになっている異常、必ず小分けしたアプリケーターやスプレイヤーなどにもラベル表示は必須です。

 

化学物質管理者を選任し業務に使用する薬品やケミカルの管理の漏れが内容にすることが重要ですね。

ちなみに、化学物質管理者は一日の講習で完了します。

 

出典:一般社団法人安全衛生マネジメント協会

 

こちらのリンクから申し込みが可能です。

一般社団法人安心衛生マネジメント協会講習申し込み

 

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