安全データシート(SDS)の理解と活用

安全データシート(SDS)の理解と活用

安全データシート(SDS)は、化学物質や化学製品の安全な取り扱いを支援するための重要な文書です。

 

この文書は、化学物質の危険性と安全な使用方法を詳細に記述しており、労働者、緊急対応者、そして環境を守ることを目的としています。

 

前回紹介した、労働安全衛生法の改正とラベル表示の義務化について:ビルメン編で紹介した内容にも大きく関係するため、安全データシートを理解することが重要になります。

 

SDSの目的

SDSの主な目的は、化学物質の危険性を明確にし、適切な取り扱い、貯蔵、廃棄方法を提供することです。

 

これにより、化学物質に起因する事故や災害を未然に防ぎ、労働者の健康と安全を確保します。

 

SDSに記載される主要な情報

安全データシートサンプル

出典:独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)
化学物質管理センター

 

記載項目 内容説明
1 化学品及び会社情報 製品名、供給者の詳細、緊急時の連絡先
2 危険有害性の要約 物理的、健康、環境への危険を含む
3 組成及び成分情報 化学品の成分とその濃度
4 応急処置 曝露の際の推奨措置
5 火災時の措置 適切な消火方法と消火剤
6 漏出時の措置 漏れやこぼれに対する緊急措置
7 取り扱い及び保管 安全な取り扱いと保管条件
8 暴露防止及び保護措置 限界値、適切な技術制御、個人保護具
9 物理的及び化学的性質 沸点、融点、引火点など
10 安定性及び反応性 化学的安定性と互換性のない条件
11 毒性情報 長期及び短期の健康影響
12 環境影響情報 環境への潜在的影響
13 廃棄に関する考慮事項 安全な廃棄方法
14 輸送情報 国内外の輸送規制
15 法規情報 関連する法規制
16 その他の情報 SDSの改訂日や参照情報

 

安全データシートには16の項目を記載する必要があります。

記載のための形式はありませんが、すべての項目が表されることが重要になります。

SDSには、化学品の安全に関する重要なデータが含まれており、労働者や緊急対応者がこれらの情報を理解し、適切に対応するための指針となります。

 

特に重要なのは、危険有害性の要約、取り扱い及び保管、暴露防止及び保護措置のセクションです。これらの情報を通じて、化学品の安全な使用が保証されます。

 

例文でわかりやすく、安全データシートを解説

SDS危険識別サンプル

画像出典元:アスクル

目的 例文 注釈
1 化学物質及び会社情報の識別 “化学物質名: アセトン、製造者: 株式会社化学製品” このセクションでは化学物質や製品の基本情報および供給者情報が提供されます。
2 危険識別 “引火性液体、急性毒性(経口)” 主な危険性、適用される警告ラベルについて説明されます。安全な取り扱いに必要な情報が含まれています。
3 組成情報/成分情報 “成分: アセトン 60%、水 40%” 化学物質の具体的な成分とその比率をリストします。
4 応急措置 “目に入った場合:直ちに大量の水で洗眼すること。少なくとも15分間洗い続ける” 応急措置に関する指示が記載されており、事故や健康障害が発生した際の対処方法が説明されています。
5 火災時の措置 “消火剤:CO2、粉末消火器、泡消火器” 火災発生時に推奨される消火方法と使用してはならない消火剤について記述されています。
6 漏出時の措置 “小規模な漏出の場合は砂または土で吸収すること” 漏出や事故発生時の適切な対応と環境保護措置が提供されます。
7 取扱い及び保管 “換気良好な場所で保管すること。直射日光を避けること” 安全な取扱いと適切な保管条件に関する指示を提供します。これにより、事故のリスクを減らし、物質の品質を保つことができます。
8 ばく露防止及び保護措置 “使用推奨保護具: 防護マスク、保護手袋、安全ゴーグル” 個人保護具や工程の制御の詳細が提供され、職場での化学物質の安全使用を確保します。
9 物理的および化学的性質 “沸点: 78°C、密度: 0.789 g/cm³、pH: 7.0(無水物)” 化学物質の物理的、化学的特性を詳述します。これらの特性により、火災のリスクや健康への影響が変わることがあります。
10 安定性および反応性 “安定性: 室温で安定。避けるべき条件: 強酸との接触、高温” 化学物質の安定性と反応性を説明し、安全に保管・使用できる条件を提供します。
11 有害性情報 “急性毒性: LD50(ラット経口)= 500 mg/kg” 化学物質の健康に対する潜在的な影響に関する詳細なデータを提供します。
12 環境影響情報 “魚に対するLC50: 40 mg/L” 化学物質が環境に与える潜在的な影響に関する情報を提供します。
13 廃棄に関する注意 “廃棄物処理業者の許可を受けた施設に委託すること” 廃棄方法および廃棄物処理に関する法的要件や推奨事項を記述します。
14 輸送上の注意 “UN番号 1090、引火性液体、クラス3” 輸送中の取り扱いと安全措置について詳述します。
15 適用法令 “化学物質は毒物及び劇物取締法に基づいて取り扱うこと” 化学物質の取り扱いに関連する適用可能な法令と規制を説明します。
16 その他の情報 “SDS作成日: 2021年1月1日” SDSの作成や改訂の背景にある情報や略語の説明など、その他の重要な事項を記述します。

 

上記の表はあくまで参考のため、正式な書面の制作については経済産業省のHPをご覧ください。

経済産業省(化管法SDSについて

 

安全データシートとラベル表記の罰則について

Q15-3.ラベル表示、SDS交付に関する罰則はあるか。

A.

ラベル表示を行わなかった又は虚偽の表示をした場合は「6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金」が設けられています。
一方、SDS交付については罰則は設けられていませんが、法律違反になることに変わりはなく、労働基準監督署の指導対象となります。

厚生労働省のホームページでは、上記のような罰則が設けれられています。
労働安全衛生法が2024年の4月から改正されたことを知らなかったでは済まされなくなるため、必ず守る必要があります。
労働者の安全を守るためにも、使用している薬品を理解することは非常に重要になります。

まとめ

SDSは、化学物質の取り扱いにおける「知る権利」を支援し、職場の安全を確保するための重要なツールです。

 

労働者、管理者、健康安全担当者は、SDSを活用してリスクを最小限に抑え、安全な職場環境を維持するための適切な措置を講じるべきです。

 

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